紀元前9世紀の古代ギリシアの詩人ホメロスの作になる叙事詩。<P> 紀元前1200年頃に10年間続いたトロイア戦争に出征したギリシアの英雄オデュッセウスの物語。原題は「オデュッセウスの詩」の意。トロイアでの長い戦争に勝利した英雄オデュッセイウスは、故郷イタケに向け出発するが、海神ポセイドンの怒りを買ったために帰国の途上数々の苦難に遭う。意図せぬ島に流されてキコン人と戦ったり、一つ目の巨人サイクロプスと戦う羽目になったり、魔女の虜となったりと結局10年の長きに渡って各地を漂流する。<P> 方や、故郷イタケでは愛姫ペネロペイアが夫の帰りを待ちわびている。息子テレマコスも立派な青年に成長したものの、我が家は、未亡人となった(と思われている)ペネロペイアに対して桊??婚する者達によって占拠された状態となっており、その飲食によって資産が放蕩されつつある。<P> そこに苦難を乗り越え20年(戦争10年+流浪10年)の時を経て帰国した勇者オデュッセイウスは、息子のテレマコスと力を合わせ、この不届きな求婚者達を成敗するのだが・・・。<P> 叙事詩という性格上、話のあらすじを知っている者に対して繰り返し話して聞かせることを前提としており、妙な所が省略されていたり、変にくどかったりするが、想像していたより、ずっと面白かったと言うのが正直な感想。ギリシア語で語られた大昔の英雄伝説を、3000年の時を超えて日本語で手軽に読めるのは以外な気がする。しかもそれが面白い。肩肘張らずにファンタジーものとして素直に読んでも良いし、教養として暗記するまで反復して読むのも一興!。是非ともお勧め。特に文庫版はお買い得。
『オデュッセイア』の新しい邦訳書の文庫化です。<BR> 高津春繁氏の訳書に親しんだ我々の世代にとっては、固有名詞の母音の長短が明示されていない点が、いささか物足りなく感じられる次第ではありますが、本書はこれまた、それなりに優れた読みやすい翻訳文になっています。<P> まだホメーロスを読んだことのない若い世代の人々、原典と「ホメーロス辞典」だけで読解するのは少し大変だという方々、新しい日本語訳で今一度『オデュッセイア』を繙いてみたいという人達には、是非とも本書を上下巻ともに、お求めになることをお薦め致します。