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| ゲーテとの対話 上 岩波文庫 赤 409-1
(
エッカーマン
山下 肇
)
「ゲーテとの対話」は、ゲーテ本人の多くの著作以上に広く読まれている、ゲーテの代表作(?)です。<BR> <P>ゲーテは霊魂の不滅を信じていました。「いつまでも働くことをやめない生命には、永遠を要求する権利がある」(1829年2月4日)。精力的な活動家であるゲーテは、基本的に楽観主義者なのだと思います。努力は実を結ぶ、正義は勝つ、愛は報いられる。--残念ながら現実は必ずしもそうではないと思うのですが、こういう信念が私たちを元気づけてくれることは確かです。現在私たちにおなじみのハリウッド映画やテレビドラマは、大抵このゲーテの精神を継承しています。<BR> <P>「努力する限り人間は迷いつづける」(ファウスト)。ファウストはグレートヒェンを誘惑して捨て、罪のない老夫妻を殺させ、にもかかわらず天国に行きます(しかもその天国行きを導くのがあのグレートヒェンだというのですから、随分虫のいい話です)。ゲーテは、神を引きずりおろし自分に奉仕させようとしている点で、「神を否定しないが認めない」と言ったイワン・カラマーゾフと同じことを要求しているのではないでしょうか? ーー私はヒューマニストのゲーテより、ニヒリストのシェイクスピアのほうが、世界を正確に見ていると思います。<BR> <P>「時よ、止まれ、君は美しい」は、ニーチェによって「これが生であったか、それならもう一度」と書きかえられることになります。ゲーテと共に選ばれた者であるニーチェは、超人を目指します。ところでドストエフスキーは、私たちが本来の自分よりも優れた人格になる瞬間がある、と主張しています(逆に、堕落する瞬間も)。しかもそのようになれるのは、選ばれた超人ではなくて、子供だったり無学の者だったりもします。ーー私は「運命愛」を説くニーチェより、「永久調和」を知っているドストエフスキーのほうが、人間を正確に見ていると思います。
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