大学卒業間近だった、戦後五十年の年の夏、この本を読んだ。自分と同じ年齢の学徒が、あの狂気としか言えない太平洋戦争に従軍して、戦死していくまでに綴られた日記や手紙、遺書などが収録してある。<P> 軍国主義日本という、また世界大戦という、とほうもない怪物を相手に、生きることは何なのかを追求しながらも、命尽きるまで真摯に戦った多くの人たち。フィクションではない。事実そのまま、戦場で亡くなった人たちが記した記録である。涙なくしては読めなかった。自分は果たして、同じ状況下で、彼らと同じ戦いをなしうるかどうか、何度も考えさせられた。<P> 普段当たり前すぎて、感じることのできない両親の愛、肉親への想い、そうした愛するものとの関係が、恐ろしい戦争によって、むざんに引!裂かれていく。そんな状況に最後まで自分を見失わず、彼らと同じく戦争という怪物と正面から向きあうことができるのか?<P> 果たして、今日の平和を享受する私たちの中で、どのくらいの割合の人が、今の繁栄がこれらの人々の犠牲の上に成り立っているかに想いをめぐらすことができるのだろうか。これを読めば、戦争を美化したり、手段化することが、どれだけ人間性に反する考え方なのか、知ることができるはずである。
これは兄から薦められた本だった。『一度は読んどいたほうがいい』と。<P>一人一人の名前と大学名、入隊時期と没年とその年が載せられていて、私と同じ世代の青年が生と死の狭間で葛藤する姿や、母を思う気持ちが綴られていて胸が苦しくなった。<P>戦争に行きたくないから試験を0点近くにしたのに、あと数点差で赤札がきてしまった人、自分の妻とまだ幼い子供を思いやる人、厳しい軍隊生活を細かく記録する人、自分の子供には絶対に兵隊にはさせないんだと叫ぶ人。<P>どれも過酷な戦争の中で、それでも生にしがみつこうと、自分の人生に意味を見つけようとしている、そして、その戦争で散っていった人たちの当時そのままの思いが詰まっている、そんな熱い一冊です。<P>これを読んで、私が今ここに生きている!!!は、この人たちの熱い思いがあったからなんだと感謝する気持ちが生まれ、そして、その人が空襲でなくなったといわれる町に立つと、昔の焼け野原になったそのときの姿が思い出されて悲しくなった。<BR>これは、読んでもらいたい一冊です。<BR>ぜひ、読んでください。