~わたしにとってこの本は、民俗学のみならず、岩波文庫全体のなかでもベスト・ワンです。個人的に感激したのは「土佐源氏」。無教養でなんの見識もないような、色と欲だけで生きてきた乞食老人の語る半生の豊かなこと(じつはこの老人は乞食ではなかったと後に知られるのですが)に感動し、何度も読み返しました。いまでもいろんなひとに勧めています。民俗学~~者の本は、わりと観念的だったり学際的だったりして、人間をみるまなざしに甘いところがあって、うんざりさせられることが多々あったのですが、宮本さんの本だけは別格です。そしてとくにこの本は、民俗学の文献でありながら民俗学を超えている名著です。しかも、寝っ転がって楽しく味わいながら読める! 人間に興味をもつ、すべてのひとにお勧めします。~
本書所収の「土佐源氏」は「夜這い」の話である。本当にあったんだね、こんな風習。<P>「旅をする易者」の話も印象的だった。易者がいまでいうカウンセラーのような役割をしていたことがわかる。昔のふつうの日本人がどんな知恵を持って生きていたかが判る本。
ご多分にもれず、私も敬愛する佐野眞一氏の著書で紹介されていたので、手に取って読んでみました。「ホンマにおもしろいんかいな?」という半信半疑な気持ちでしたが、読んでいくうちに宮本常一氏が触れた世界、そこで語られる老翁たちの話にぐいぐい惹きこまれていくのを感じました。<P>幕末から太平洋戦争後まで、日本は本当に大きな時代の波に飲み込まれていきます。しかし、その歴史の裏で歴史の流れとは無関係に泰然として生きてきた日本人がいたことに感動しました。彼らは当然歴史の表舞台には出てきませんが、それでもこの日本という国を形成してきたのだなと。<P>盲目の元馬喰「土佐源氏」の話、対馬の開拓漁民「梶田翁」の話、世間師の話。。。どれも、新鮮で考えさせられ、またなにか私の人生の桊??針となるような気がしています。また、もう一度読んでみたいと思っています。<P>こんないい本を、この程度でしか書きあらわせない自分の文章力のなさに腹が立ちますね。