現代日本にあっては、戦争の陣頭指揮をとることはまずありえないが、たとえばビジネスの世界でも、孫子の思想は十分に活かすことができる。特に、部下の指揮を執る立場にある管理職クラスの人にとっては、格好の指南書となるだろう。
孫子は言う。<BR>「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず」と。(謀攻篇第三)<P>私たちは情報に溢れる社会に取り囲まれている。<BR>しかし、有効な情報とは何かと考えた際に、明確に回答できる者は少ないのではないか。<BR>孫子は、命の駆け引きである「戦争」をフィールドとして、情報分析の手法を書物に託した。<P>たかが古代の書物と侮ってはならない。<P>古代と現代において、人間そのものは何一つ変わっていないのだから。
1972年出土の前漢時代の竹簡テキストで校訂した「新訂」本というのに魅かれて購入しました。十一家注本をもとにした手堅い仕事で、現時点での良いテキストを廉価で提供していると思います。なによりも、複数の写本・竹簡本の違いがよくわかるので、自分で考えられるのがいいところです。<P>竹簡を加味した校訂で「善戦う者の勝つや、奇勝無く、智名無く、勇効無し」(形篇)という名言を知ることができたのは嬉びです。<BR>翻訳でも、訳者が補ったところは〔〕でくくってあり、竹簡本などで補えるところは()になっていて良心的なのですが、さっと読みたいときには少し煩わしい感じもします。<P>文字の異同、文字の解釈については、他の翻訳書よりずっと細かい注がついています。ただ、翻訳文の各所においてなぜそういう解釈をしたのかという点で、もう少し解説文が欲しかったかなと思いました。また、2セットある竹簡の「形篇」の異同にもコメントがあってもよかったと思います。<P>同じ訳者の「易の話」も面白かったのですが、今はちょっと品切のようです。