という意味で良くも悪くも、岩波文庫的な本だなあと思いました。<BR>『客観性』ってああいうことだよね、と思っている人には、<BR>それを再確認・再整理してくれるという意味で読む価値があります。<P>でも、君の客観性はまちがってるよ、といわれてこれを読むように<BR>薦められた場合、これを読んでもよくわからないかもしれません。<P>もっと平易な新書レベルの本を読んだほうがいいかもしれません。
言わずと知れた、社会科学方法論の古典中の古典。経済学の教科書を現実の政策に直接あてはめようとする、「理念型」と当為を峻別できていない近時のエコノミストと呼ばれる方々には、是非本書を熟読してレポート10枚書いていただきたい。<P>ところで、この岩波文庫新版の特徴はなんといっても分厚い解説であろう。表題のヴェーバーの論文が164ページであるのに対して、解説はなんと158ページにもなる。かつてゲームソフトで問題になった抱合せ販売を思い出させるが、この価格で古典とその解説本がパックと考えれば安い。解説まで読んだ者としては「お買い得」だと断言しておこう。ヴェーバーのもってまわった言い回しを、解説がパラグラフごとに理解しやすいようパラフレーズしてくれているので、論旨を追うのが楽であった。<P>ただし、責任倫理を強調する折原氏の解説は一つの解釈でしかないことを読者は常に念頭においておくべきであろう。自分なりに解釈してヴェーバーの問いかけを考えること、その「考える」過程こそが古典を読む意味なのだから。
改めて説明するのも憚られるほど社会科学史上重要な文献です。実験による解析が困難な「社会」を、いかに的確に解析するか、その解析の確からしさはどのように認められるうるか、といった問題に正面から取り組んだ野心的な試みと見て良いでしょう。社会科学方法論を考える意味でも、あるいは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などウェーバーの主著を読み解くためにも、必読文献です。<P>もととなっているウェーバーの原著には、他にいろんな翻訳が出版されています。そこで、この翻訳本では、先行する訳本を意識した差異化が図られています。<P>その差異化を示す最大の特徴は、重厚な解説が付されていることでしょう。本文では各パラグラフごとに番号が付けられていますが、その番号に即して本文とほぼ同量の丁寧な解説が掲載されています。ですから、本の厚みが、本文の分量からほぼ倍になっています。<P>軽装な本が店頭に目立つよう並べられ、古典的な書物が敬遠される昨今にあって、いかに古典の良さを伝えるかが出版社としても大きな課題なのでしょう。この訳本は、訳文だけを掲載するのではなく、それに合わせて重厚な解説を付けるという、野心的な試みと言えましょう。<P>著者のものではない解説を付せていること、ページが増えたことで高額になったのではないか疑われる点など、批判的な見解もあるでしょうが、独力で古典的な著作に取り組むためには、お値打ちな企画と考えて良いのではないでしょうか。<P>ともあれ、社会科学は、社会を認識する大切な手だてであり、人類にとって重要な知的遺産ですが、社会について真剣に考えたい人にとっては、本文に合わせて、その理解を助けるサービスもまた望まれるでしょう。そういった方々にとっては、この訳本は、内容はもちろんですが、新しい出版形式としても、大いに刺激的なものといえるのではないでしょうか。