利根川のノーベル賞の対象となった仕事の説明なら、立花隆のインタビュー本(文春文庫)、があるが、この本(前半の講演集)はノーベル賞の受賞対象となった仕事の説明、に加え、その後、転身した?脳の記憶の解明、の二つを一気に100ページでスッキリ説明してあり、説明のうまさに感心した。後半のインタビュなどは立花本と重なるところが多いから、省略し、利根川の研究対象と、脳科学全般における位置づけ、認識に対する物理的記憶構造の関与の有無、にたいする利根川の見解などをききたかった。さらに、マウスが大きく理論形成に寄与しているようだが、仮説、と、マウスによる確認、だけで、理論が検証できるのか?というところも知りたい。第一講演の、ダーウィンの仕事を分子生物学タームでスッキリ述べたところ、有益であった。
ノーベル医学賞受賞者である著者の講演や対談の内容をまとめた作品。同氏の自伝の部分と、記憶に焦点を当てた脳科学の内容との2つから構成されている。とりわけ前者の側面が強いので、脳科学について知りたいと考える読者には推奨できない。<P>成功のためにはプライオリティ(優先事項)が重要で、ほかのことを切り捨てないとだめだ、とする同氏の主張は参考になる部分も多い。一方で、宗教や哲学などの全ての価値観も脳科学に行き着くとする考え方は、読む者によって賛否に分かれるのではないか。平易な文章で書かれており、一人の偉大なサイエンティストの考えに触れることが出来るので、是非とも中高生に読んでほしいと感じさせる一冊である。
利根川氏は,日本人研究者で最も成功した一人です.彼の現在の研究紹介よりも,彼の成功のメカニズムに学ぶ所は多かったです.中でも『私は若い研究者に,できるだけ研究しないように,勧めている』という言葉が衝撃でした。自分をconvinceする前に,方向性を確定してしまうのは良くない,という事なんですね。ここまで自己管理できて,初めて,成功の可能性が出てくる,というわけですから、、、いやいや、本当に勉強になります。