この本で著者は現在のアメリカを「帝国」と規定しており、現在のアメリカの単独行動主義を批判的に捉えています。<P> そもそもこの新書で「帝国」とは、1つの中軸的権力による、他国には政治的軍事的選択肢を与えないような軍事政治の支配体制として規定しており、その点で、マルクス主義的な経済決定論による「帝国」概念とは一線を画しているのが大きな特徴です。<P> そして、映画『インディー・ジョーンズ』や『インディペンデンス・デイ』におけるアメリカの描写などを題材に、アメリカと言う国は、そもそも理念によって建国された国で「国境」や「外部」と言う概念に乏しい国で、元々から「バランス・オブ・パワー」による外交よりも「建国の理念を世界中に広げる事」が外交の基本方針としている!を下敷きに、冷戦下では「ソ連からの防衛」の為の軍事介入や援助を行い、そして東側諸国崩壊後のいわゆる「冷戦後」の状況で、「圧倒的な軍事力と軍事技術」を有する「超大国」となってしまい、国連などの国際機関へのコミットメントをする姿勢にますます消極的となり、更に「9・11事件」以降は、国家のみならずテロリストまでも排除の標的にして行く様になった事を挙げています。そして皮肉な事に、ヨーロッパ諸国もアジア諸国も、不承不承にアメリカの「圧倒的な軍事力」に依存しないと外交政策を論じる事が出来なくなっている現実や、皮肉な事にアメリカのリベラル派がアメリカの進める「正義の戦争」に支持を与えていると言う現実をも克明に記しています。<P> 圧倒的な軍事力を有して、他の世界各国の!政策を翻弄してしまうアメリカの暴走を食い止める為にも、著者は、国連を含めた国際機構の地道な再構築を目指す事こそが現実的であることを主張しています。<P> 以上の筆者の視点は、アメリカやそれ以外の国との関係の現状を考えると、「賽の河原で石を積む」様に見えるかもしれないでしょうが、それ以外、有効な手段は無いと私は考えますが、いかがでしょうか?
この本で著者は現在のアメリカを「帝国」と規定しており、現在のアメリカの単独行動主義を批判的に捉えています。<P> そもそもこの新書で「帝国」とは、1つの中軸的権力による、他国には政治的軍事的選択肢を与えないような軍事政治の支配体制として規定しており、その点で、マルクス主義的な経済決定論による「帝国」概念とは一線を画しているのが大きな特徴です。<P> そして、映画『インディー・ジョーンズ』や『インディペンデンス・デイ』におけるアメリカの描写などを題材に、アメリカと言う国は、そもそも理念によって建国された国で「国境」や「外部」と言う概念に乏しい国で、元々から「バランス・オブ・パワー」による外交よりも「建国の理念を世界中に広げる事」が外交の基本方針としている!を下敷きに、冷戦下では「ソ連からの防衛」の為の軍事介入や援助を行い、そして東側諸国崩壊後のいわゆる「冷戦後」の状況で、「圧倒的な軍事力と軍事技術」を有する「超大国」となってしまい、国連などの国際機関へのコミットメントをする姿勢にますます消極的となり、更に「9・11事件」以降は、国家のみならずテロリストまでも排除の標的にして行く様になった事を挙げています。そして皮肉な事に、ヨーロッパ諸国もアジア諸国も、不承不承にアメリカの「圧倒的な軍事力」に依存しないと外交政策を論じる事が出来なくなっている現実や、皮肉な事にアメリカのリベラル派がアメリカの進める「正義の戦争」に支持を与えていると言う現実をも克明に記しています。<P> 圧倒的な軍事力を有して、他の世界各国の!政策を翻弄してしまうアメリカの暴走を食い止める為にも、著者は、国連を含めた国際機構の地道な再構築を目指す事こそが現実的であることを主張しています。<P> 以上の筆者の視点は、アメリカやそれ以外の国との関係の現状を考えると、「賽の河原で石を積む」様に見えるかもしれないでしょうが、それ以外、有効な手段は無いと私は考えますが、いかがでしょうか?
本書は米国が同時多発テロを境にその一国主義的傾向を決定的にし、<BR>対テロ戦争を進めていく様を「帝国」としてとらえた書である。<P> 筆者がいう帝国とは植民地獲得の軍国主義国家という意味ではなく、<BR>またマルクス主義的な意味でもない。直接支配は避けるが、米政府の<BR>原則や戦略に合わない政府は認めず、場合によっては介入して倒して<P>しまう、という側面からそう呼んでいるのである。<P> たしかにこれは現在の米国の一面を言い当てているとはいえる。<BR>しかしやはり一面的、一方的に過ぎることは否めない。たとえば<BR>ハリウッド映画を使っての例え話は分かりやすいが、うがちすぎの<BR>観もあり、実際の米国民の意識かどうかは定かでない。また今回の<P>イラク戦争にいたる過程では独仏露などの国々が最後まで戦争に<BR>反対するなど本書の設定とはややずれが見られた。<P> 別に米国の肩を持つわけではないが、本書に描かれている米国は<BR>一時的な姿ではないか。現在の米政権が交代した後にも本書が<BR>輝きを保つかは不明である。