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宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待― ( 松井 孝典 )

 地球の成り立ちを語らせたら右に出るもののない気鋭の地球惑星科学者による新作。彼の提唱する地球(知求)学とは、要素還元主義によってばらばらにされた宇宙に関する知識を再統合し、ダイナミックな地球システムと調和した「人間圏」の将来への洞察から生まれる新たな倫理といってよい。宇宙から俯瞰する視点で、言い換えれば宇宙人の目で見ることによって、人間中心主義や「地球にやさしい」思想の落とし穴を容赦なく指摘する姿勢は他の著書にも共通する。<P> 著者は、「人間圏」が「生物圏」の一部に退却するという選択肢が事実上不可能であること(地球全体で500万人の人口しか生きられないことを意味するから)、環境問題を単なる善悪の問題に置き換えて思考停止してしまうことの危険を語る。!れらの指摘になるほどと頷かされる一方で、一抹の不満を覚えるのは、これからの「人間圏」の在り方について、著者自身にすら具体像が結ばれていないのではないかと思わされることだ。<BR> もっとも、本書そのものの完成度は高くない。NHK人間講座のテキストに加筆したという経緯とおそらく原稿整理の時間がよほど限られていたのだろう。繰り返しが多く、「人間圏」を支える新たな思想-レンタル-型社会への考察が相対的に不足している感が否めない。<P> さりとて、示唆に富んだ問いかけ(アルカディアかユートピアか、20世紀の特殊性)に溢れた本書が、これからの地球環境に思いを馳せる万人にとって有益であろうことは間違いない。火星では、6万年ぶりの地球大接近という天体ショーを夢中で観測する星人はおらず、我々は「人間圏」の問題をやはり人間自身で解決しなければならないのだから・・・。

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