日本の租税制度について、その実態を理解できているといえる人たちは多くないのが実情です。と言うのも、全て源泉徴収と年末調整にまかせっきりで、税務署と渉りあったことのない給与所得者(要はサラリーマンの事です)が日本の労働人口の多数を占めているからです。そのためにこの本は、多種多様な税金のうちで、まずは所得税についての話からスタートしています。<P> この本は、源泉徴収制度と年末調整のセットが如何に多数の一般人から税金に対する知識を奪っているのか、そして税法に対する無知から税金の議論をすれば却って国民が自分自身の首を括る結果となると言う異常事態が生じるものか、という議論を、所得税みならず法人税、消費税、相続税、酒税などに亘って的確な形で繰り広げています。<P>(例えば配偶者特別控除の廃止のお話が税制に関するフェミニストの無知につけこんで実現したり、法人税について安易に増税を主張する人が多かったり、サラリーマンが自営業者を安易に「脱税の巣」と目の敵にして彼等に対して納税者背番号制を敷けという議論につながっていることなどが具体例でしょう。)<P> その様な税金に対する無知の状態から脱して、悪税に対する批判の拠点を持つためにも、そして余計な税金をぼり取られないためにも、内容は濃いけれども、この本を読むことによって税金に対する的確な知識が得られる事は間違いないことです。
きりりとしたいかにも頭脳明晰な語り口で税制の現況が俯瞰できます。税金ほど誤解と無理解と被害者意識と共に語られやすいものは少ないと思うのですが、これほど要点を衝く書物は<P>貴重です。ただ、実務経験の少ない方で一読してすいすい頭に入る方は、<BR>よほど優秀な方です。普通は何度か読み返さなければならないと思うのですが<BR>その苦労をしても読む価値はあります。新書一冊で、場合によれば数万単位のお金が将来セーブできるでしょう。
現在の税制度の全貌、問題点がわずか新書200ページで概観できる、大変意義のある一冊。<P>ただ、200ページにまとめた弊害として、用語の説明などが省略されており、特に前半部分、税金の知識が全くない人が読んだ場合には「?」な箇所がけっこうありそう。<BR>本当に一から理解したい人には、同じ著者の「よくわかる税法入門」(有斐閣)の方が分量が多く、平易にまとめられているのでおすすめ。