従来の偉人伝とは異なる偉人伝として読む事ができました。ここに出てくる人達の気質を示されているので、自分の行動と彼らの行動様式(成し遂げた偉業ではなく)と比べて、自分の気質も「こんなのかなぁ」と思いながら読める本です。著者あとがきにもありますが、湯川博士や朝永博士から好評であった本だったようです。そういう意味ではボーアやヴィトゲンシュタイン達と同時代に近い方々、彼らを身近な存在として感じられた方にはより好評であったと考えられます。そういう意味では、ニュートン、フロイト、ボーア、ヴィトゲンシュタインなど、この本に載っている科学者の半生を事前に読んでおく事で、より一層楽しめる本かもしれません。
科学者というものはどこか屈折しているというか、変わり者が多いと思います。いい意味でも悪い意味でも。私は進化論にあまり共感できないでいる人間なのですが、この本で悩める人間ダーウィンの生き様を紹介されて、「彼はどうしてこういうことを考えるに至ったのか」が少し納得できました。嫌いなことでも納得できれば怒りは湧きません。これからはもっと公平な目で彼の著作に取り組めそうです。いつもながら、著者の膨大な知識量(あと科学と宗教を上手くまとめる能力も)には感服します。専門的な話は少々難しく感じました。<P>著名人の伝記(特に子供向けのもの)というと、その人の天才的業績や人格のみに光が当てられて、実際の人物像がゆがめられていると思います。この本は病跡学という分野だそう!すが、こちらの方がもっと「まとも」な伝記のような印象を受けました。
天才数学者が精神分裂病(統合失調症)に悩むといった映画がアカデミー賞をとった。天才というと、その偉大な業績の裏には孤独や葛藤といった生活のアンバランスぶりがつねにつきまとっているイメージをもってしまう。本書を読めば、そういったイメージはけっして迷信ではないということを知ることができる。天才と精神的な病理とは表裏一体なのだ。<P> 本書では、ニュートン、ダーウィン、フロイトなどの天才と呼ばれる科学者を、分裂病圏、躁うつ病圏、神経症圏の3つに分類する。ニュートンはひらめき型、ダーウィンはこつこつ型の科学者といったことはよく言われることだ。精神病理というキーワードを切り口にして、彼ら天才たちの生活や性格が浮き彫りにされていく。<P> 天才でない凡人にとっても、なんらかの精神病理の傾向はだれもがもっているものだろう。自分がいったいどの分類に属しているのか、自分自身を知るヒントにもなる。