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| 血にコクリコの花咲けば―ある人生の記録
(
森嶋 通夫
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日本を代表する経済学者森嶋通夫氏が旧制高校~軍隊生活期を綴った自伝です。森嶋氏といえばその妥協しない反骨精神と確固たる信念の人として知られていますが、それは決してただ頑固なだけではないことが本書を通じて浮かび上がってきます。日本の無謀な戦争を非難しつつも軍隊組織においては勤勉に務め、その中で敬意を払うべき人にはきちんと評価し、一方でにわかに戦争に迎合する大学教官を強く批判するなどバランス感覚を発揮しているのです。<P>また純粋に戦時中の状況を伝える読み物としても楽しめます。軍隊内部は決して一様ではなく、また終戦直後の混乱と軍隊秩序の無様な崩壊は読み応えあり。巻末の戦艦大和の最期への考察には力の入れ様が感じられます。現代の私達に親しみのない旧制高校や軍!のシステムも平易に解説をする心配りもあります。
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