上巻ではバスクを集中的に取り上げた著者だが、下巻ではマドリッドからトレドへ、そしてそのままタホ河沿いに西へと向かい、ポルトガルへと旅が続く。アンダルシアやカタルーニャにも行って欲しかったところではあるが、もしかしたら堀田善衛の著作を意識したのかもしれない。堀田はアストゥリアス、グラナダ、バルセロナにそれぞれしばらくの間滞在して、司馬に劣らず素晴らしいエッセイをものにしている。二人の著作を合わせればスペイン全土がほぼ網羅されるのである。<P> 本巻ではポルトガルの大航海時代に関する記述がやはり思い入れが感じられる部分で、陸軍で満州でという司馬の軍歴から海への憧れが強いのかもしれない。<P> 堀田善衛『スペイン断章』『バルセロナにて』『歴史の長い影』『ゴヤ!も併せてお奨めする。
本巻はポルトガルについてがメインです。<BR>スペインとの対比では、軍隊的貴族のスペイン対町人国家ポルトガルといった表現がでてきます。おおまかながら、要点をとらまえていると思います。<P>大航海時代の話は、こんな風です。ジョアン1世のお妃が英国の王族で、その三人息子はいずれも、それぞれの才能を発揮してポルトガルの発展に貢献した。三男が、エンリケ航海王子。航海の資金などはテンプル騎士団の財産を一部引き継いでおり、ポルトガル船が赤い十字のデザインを使っているのも、テンプル騎士団の遺産である・・・。<P>アフリカやインドの話はあまり出てきませんが、日本語の中におけるポルトガル語や大航海の痕跡といった話で、「キセル」はカンボジャ語などといった話もでてきます。<P>いつもな!がら、面白いです。