子供の頃、「手ぶくろを買いに」を読んで、そのほのぼのと美しい世界に共感しました。子供のことを思いやる母狐とひとりでお買い物に行く冒険心にわくわくする子狐の物語は、小学生の私にとってとても分かりやすい世界だったのです。<P>この絵本は、そんな新見南吉の優れたテキストに、黒井健の幻想的な絵がちょうどうまく働いて、とても美しい絵本に仕上がっています。子狐が走る雪の質感、母狐のやわらかな毛並み、雪の中の明かりの美しさ、いずれもテキストのほのぼの感と呼応して、ふんわりした中にも鮮やかな絵の雰囲気もプラスに作用して、母親の愛情と子供の張り切り感をうまく表現している絵になっていると思います。絵の持つ質感と物語の内容がうまく相互作用し大人も子供も楽しめる、質の高いお!勧めの絵本です。
もうじき産まれる子供のために買いましたが、大人の鑑賞にたえる絵本です。<BR>裏表紙をみると、「大人の絵本(小学校中級以上のお子さまにも)」とあった<BR>ので納得しました。幼児に読みきかせるにはちょっと難しい表現があります<BR>が、なんといっても絵が美しく1枚1枚の絵を額に入れて飾っておきたいくら<P>いです。お母さんが読んで心をなごませ、子供が絵をみて喜ぶ絵本だと思い<BR>ます。
この本を買ったのは、10年以上前になります。駆け出しの新聞記者だった私は、ある書店の取材でこの本を知りました。「この本を知っていますか」「ええ、読んだことがあります」「違います、黒井健さんの絵です」「いや、知りません」……。手に取ると、写実的でありながら幻想的という、矛盾ギリギリのような、魅力あふれるほんわりとした絵でした。私はその場で本を買い、以後も何冊も買って、知人に贈っています。布や綿のようなものに絵の具をつけ、こするようにして描いているのだそうです。ストーリーは知っている人も、この絵を見るためだけに買っても損はしません。同様の理由で、「ごんぎつね」もおすすめ。