いつもと違います。炸裂する駄洒落がありません。でも、同級生達との再会をしみじみと、でも、いつものすこし斜めな目でするどく、すっきりと書いています。米原ファンもそうでない方もぜひ一度。
「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」読後感 米原万里著<P>著者は1960年から1964年までの在プラハ・ソビエト学校で過ごした。その当時の3人の同級生、ギリシャ人のリッツア、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ、の物語である。<P>リッツアは、1968年のプラハの春に対するワルシャワ条約機構による弾圧、アーニャは1989年のルーマニア・チャウシェスク政権の転覆、ヤスミンカは1991年のスロベニア、クロアチアの独立宣言を発端としたユーゴ多民族戦争、で3人の運命は翻弄された。リッツアはギリシャが好きであっても、ヨーロッパ文明の中で育ったため文化より経済をとってギリシャに戻らず西ドイツに移住、アーニャは民族主義を捨て、ルーマニアを捨て英国に移住、ヤスミンカはボスニア・ムスリム!!あってもユーゴスラビアの友人、知人、隣人たちとの日常、ユーゴスラビアを捨てられず、ベオグラードに住んだ。<P>著者の友人3人のそれぞれの人生を通して民族、文化、言語、国家、個人について、考えせられる。さて自分がこのような社会変動にさらされたとしたら、リッツア、ルーアーニャ、ヤスミンカのどの人生を選ぶであろうか。おそらく、日本を捨てられず、ヤスミンカのような人生を選ぶと思う。日本という国家が永遠に存続することを信じて疑う必要のない日本人であることを幸せに思うと同時に、国際化がすすんでも日本人としてのアイデンティティを大事にしたいと思う。<BR>(読後感、二木正明)
軽快なお喋りで激動期の東欧社会での子供たちの世界を活き活きと描き出した感動的な話。<BR>子供たちの目を通して描かれる共産社会の国の関係がエスプリが効いている。大人たちの絵空事が深く子供たちの全人格に関わっている様子がよくわかる。<P>作者は、東欧で子供時代を過ごすという日本ではごく稀な経験の持ち主。彼女は、子供時代の親友に会う為に激動の東欧に出かけてゆく。<BR>会うまでの話も感動的で、やっと会えた時の嬉しさを作者と共に分かち合える。本当に素敵な作品。<BR>東欧の今の様子を知るのにも役立つ。