あの齋藤孝が実は呼吸法マニアだったのを、本書を読んで初めて知った。<BR> 呼吸法の本は多数出版されているが、その中で最も簡単な方法をまとめたものだ。3秒で息を吸い、2秒止めて、15秒息を吐く(3・2・15)という。<BR> 本書では、気功については、意識的に記述を避けている。科学的根拠について、齋藤氏自身が納得していないからだ。<BR> 本書の注目点は、呼吸法は健康な心身づくりに利用できるが、カルト宗教などの悪用も可能だと言っている点だ。そして、カルト宗教に悪用されていくメカニズムをわかりやすく解説している。ヨガや呼吸法に興味の無い人でも、この部分はぜひ読んで欲しい。
amazonで検索すると現在日本では数百点に及ぶ「呼吸法」に関する書籍が出版されている。その内容もヨガや気功などさまざまなルーツが見受けられ効能についても美容・健康、心理的安定から果ては知的能力の向上や人格改造まで謳われている。齋藤氏はこの本の中で日本は「身体文化」が衰退していると書いているが、まさに世の人はそれを潜在的にせよ感じているのだろう。<BR>ところで、この分野でこれだけの書籍が見受けられる中で後発のこの本が出版される意義はあるといえるのだろうか?<P>「齋藤呼吸法」の最大の特徴は呼吸法を極端に単純化したことである。その理由として齋藤氏は呼吸法を「誰でも教えられ、誰にでも行いやすく、誰にでも効果のある」方法として普及させるためだとし、暗に他の呼吸法の複雑な体系から一線を画している。この点を見抜いたのはさすがに教育に携わる人だといえる。<P>但し、私はこの呼吸法は「教育」に使うにはまだ未完成だと考えている。齋藤氏は(他の書籍にもいえることだが)よく達人を例に挙げているがそこへ至る道筋を示したことがない。齋藤メソッドは誰でもできることを優先させるために「入門」の部分だけしかなく、上の段階が見えてこないのである。また齋藤メソッドでは他の書籍で「段取り力」また「まねる力」が重要視されているはずだが、それらとこの呼吸法との接点が見えてこない。齋藤氏の次にするべきことは自分の理論の体系化だと思う。