心とは何かについて,現代の哲学・認知科学の2大潮流である古典的計算主義と,コネクショニズムとを紹介し,対照的に解説したもの。 <P>パーセプトロンの登場以来半世紀が経ち,いまや,心をニューラルネットワークとして理解しようとする態度は,認知科学諸分野では当然となった。しかし,離散的な記号表象に基づかないこの心観は,これまでの心観のどれとも相当に異なるからか,一般常識に至るにはまだ程遠いところにある。 <P>本書は,この新しい心観であるコネクショニズムを,きわめて明快に解説する。特に,その数学的特性よりむしろ認識論上の特性から切り込んでいく解説スタイルは,洋書・和書含めてここまでわかりやすいものを私は他に知らないほど,秀でている。 <P>読後には,量と流れによる,ちょっとドゥルーズ的な,そんな新しい世界観への入り口に,きっと辿り着いていよう。
著者が意識して、新書という条件の中で、記述される内容を厳選したのであろうと感じられる。このため、話題の範囲は決して、広くはない。しかしその分、語られる内容が非常に明確である。また、その中心的な話題も、人間の認識の様子を徹底して、物理的な基礎をもつ事象として記述するという、冒険に満ちたものである。「こんなに簡単に説明しちゃっていんでしょうか。」、「いいんです。」という自信に満ちた、いさぎよさ。分かりやすくて、おもしろくて、ためになる、かつ安価といった、3拍子も、4拍子も揃った良書としか思えません。