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五輪書 ( 宮本 武蔵 鎌田 茂雄 )

宮本武蔵の人生哲学が書かれていると、勝手に思い込んでいました。でも、書かれているのは本当に剣の道なんです。たとえば五つの基本形について、「第一のかまえは、中段をとり、太刀の先を敵の顔につける」など。剣の実用書ですよ。敵がいることを前提として書かれているので、自分自身との戦いにどう勝つか……なんてことのヒントにはなりにくいです(そんなことをこの本に求めた私がバカだったのかもしれない)。ただ、一つうなずけたのは、「修行が未熟なうちは、よい技をしよう、うまく動こうと思うからかえってできなくなる」という箇所。これって何事にも言えることですよね。「五輪書を読む」ということに関しては、訳文も詳しいしおすすめできます。ただ、五輪書を人生哲学書だと思うと失敗しますよという……(そんなこと思うの私だけか)。教養にはなりました。

 今、時代はサムライを求めている。バブルが崩壊してから、10年。大人達は自信をなくし、物心ついた時から不景気しか経験していない若者は、無気力・無感覚と揶揄されている。企業や政治家のモラルは低下し、毎年のように新たな精神疾病がマスコミに取り上げられている。<P> こんな混迷を深めた現代だからこそ、文武両道を極めた武蔵から学び取ることは多い。不合理と見えるほどストイックな彼は、快や不快などの単純な欲求に振り回されず、より高次元の思想を掲げ、実践した。死を感じることで、生の意味を体得し、一瞬一瞬をまさに全力で生きた。己だけを信じることでリスクを回避し、決して中途半端な妥協を許さなかった。名を惜しみ、命を惜しまず。そんな彼のサムライ精神を学ぶことは、人生を三倍生きるといっても過言ではないと僕は思う。

本書は宮本武蔵の、時代と国を超えて読み継がれる名著「五輪書」に鎌田茂雄氏が現代語訳と解説を付した本です。<P>本書は各社から出ている五輪書の中でも、読者への親切心に最も満ちた1冊でしょう。五輪書は「地之巻」「水之巻」「火の巻」「風の巻」「空の巻」の5巻で構成されていますが、それぞれの巻で各段落ごとに現代語訳が挿入されています。気軽に読み易く、現代語訳は極めて明晰です。<P>解説を要する箇所には「付記」があり、そこで鎌田氏の鋭い考察が展開されています。それを読むと、何故五輪書が人生やビジネスの分野でも注目されてきたかが、現代語訳の読解よりも更に分かりやすく実感できるようになっています。<P>本書は「兵法三十五箇条」と「独行道」も併せて収録しています。ただこれらについては代語訳が無く、本書の欠点となっています。それを除けば、本書は五輪書読解に非常に適しています。五輪書初心者にお勧めです。

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