なぜ、森博嗣はここでS&MシリーズとVシリーズを整理したのだろうか?おそらく、この『秋』は冬に続く前の整理の章としての位置づけなのではないだろうか。あるいは今までの『答え』を提示しているのかもしれない。つまりは、一つの『結果』である。<P> ネタバレかも知れませんが、話の中に、(答えは存在しない。考え続ければ、それに自身が持てるだけ。でも、何度も何度も同じことを考え続けることは難しい。)と、いった表現がある。ある意味、考え続けた人への森博嗣との答え合わせなのかもしれない。また、『考察』をするためには『結果』がいるからなのかも。<P> 論文の書き方において、はじめに要約、次にイントロダクション、方法、結果、考察の順に書くことは絶対である。<P> この本が異質なのは、『四季』の考えをトレースするために犀川&萌絵たちが事象を整理している点である。いくつかの引用に過去の物語が示されているのもその所為だろう。四季が中心の物語ならば、すべての登場人物の物語でもある。考え続けた人にはやっぱりであるが、なぜ明らかにしたのか?という疑問が次への期待になる。漸く、結果が明らかにされたのだから、どう考察されるのだろうか?何が示されるのであろうか?森博嗣のいいたかったことが『冬』で分かるのかな?
S&Mシリーズ、Vシリーズ、この二つに張り巡らされていた伏線の回答がようやく明かされる巻です。<BR>逆にS&Mシリーズ、Vシリーズを読んでいなければ楽しさは半減どころか二割あるかどうか・・・。<BR>そういう意味での星四つ。<BR>私自身は星五つどころか七つくらいあげたい気分です。<BR>今までシリーズを読んできた人はぜひ読んでください。<P>きっと驚くと思います。
四季シリーズ3作目。<P> メインの視点を久々に犀川助教授と西之園萌絵に戻して、「有限と微小のパン」以後の二人の関係の進展(…あるいは進展のなさ?)も描きつつ、犀川&萌絵とその他の登場人物たち──誰が出てくるかは内緒ってことで──の心に天才・真賀田四季が落とした影と彼女の残した謎が、彼らを突き動かし、物語を収束/終息へ導く予感を感じさせる物語となっている。<P> …と真面目に書いてみたものの、単純に犀川先生と西之園君の物語の続きが読めて嬉しい、というのが正直なところかな。萌絵の仕掛けを犀川が伝家の宝刀「意味なしジョーク」でかわすやりとりとか。他にも過去の2シリーズの間は、暗に示唆されてはいたものの伏在していた人間関係が顕在化して、ちょっと楽しいことになったり。相変わらず暗躍してる人もいるし。<P> そういう訳で、過去のシリーズからの読者を裏切らない出来となっております。ただし、読んでいて含み笑いを漏らす可能性がありますので、周りをよく確認してから読んで下さい。そして、四季シリーズから新しく出会った人は、過去の作品を読んでみると更に(3倍くらい)楽しめるので、是非読むことをおすすめします。