よく、酒を飲んで自らの経験談を面白く語って聞かせる人がいるが、そういった感じのする「お話」である。お話の内容は、なかなか聞けない貴重なものである。本になるような話は、立派な事柄をなした人とか、新聞記事のようなものが普通だが、それらとは殆んど縁のないような、タイやカンボジアでダラ~と暮らして、そのダラ~とした視線で捉えた、それぞれの国のぶっ飛んだ日常というか人々の暮らしぶりである。はなかなか味わえないリアルな体験記で、報道されるニュースの裏側を覗いているようでもある。西原理恵子の強力な漫画が、半分差し込まれており、面白い。有名な国境なき医師団が、医療活動のついでに現地の看護婦を抱きかかえて去ってゆくなど、「かも」ならではのお話だろう。
我々が東南アジアの国を思う時、まず浮かぶのが亜熱帯地方特有の気候と街全体にみなぎるパワー、人々のしぶとさと大らかさではなかろうか。それは高度成長で一億総中流家庭となることにより、多くの日本人が忘れてしまった「生きる力」とも呼べるものであると思う。<P>本書はだらしなくて、いいかげんで、気が弱くて、でも優しい鴨志田氏(実物は知らない。文章から受ける人物像ね)が大都会バンコクですごした数年間を書いたエッセイである。旅行では見ることのできないバンコクのいかがわしさとそこに住むかなりいかがわしい日本人が描かれている。実際にこのいかがわしさに直面したら、私、生理的嫌悪感剥き出しにし、登場する人達に対しても「サイテーな男」と一蹴することだろう。しかし、著者の筆を!通すとこのいかがわしさこそが「生きる力」であり、愛すべきものであるようにすら感じられるのだ。
おなじみサイバラとカモちゃん夫婦が知り合った あほでばかなアジアに住んでいる日本人のお話。 ああ、こういう「負け組」たくさんいるんだろうなぁと 目頭が熱くなる。 いいかげんにしなよといいつつも、優しい目でその人たちを見続けるカモちゃんは、本当はさみしがりやのかわいい 人なのかもしれない。