本書はタイトルのとおり、失敗から何をどのように学ぶべきか、そのコツと注意点が書かれている。それだけで十分に研究を必要とする内容に仕上がる。なぜなら、人は本質的に失敗を犯す生き物だから。そして痛い思いをしないと、本当には学べない生き物だからである。言われてみれば誰でも当然と思うのだろうが、それをきちんと追いかけて体系化しようとしたところが著者の非凡なところである。「失敗学」と名のつく類書は多く出ているが、本書から入るのが一番いいと思う。失敗学の概論から入れる感じがする。
経験を蓄積したものが、「技術」なのだと思う。<P>上手に運んだことは、たいてい模倣される。しかし、うまくいかなかったことは、多くの場合、個人の責に帰されて封印される。<P>組織においては、会社でも、役所でも、軍隊でも同様だろうが、経験の蓄積や、判断の根拠を残すことは、よほど意識しない限り行われない。そうした記録を書ける能力のある人は、常に忙しいことになっている。<P>成熟した組織ほど、いろいろな決断があいまいなプロセスの中から導き出される。根回し、退屈な儀式化した会議、重役の意向・・・などなど。<P>意思決定の根拠を残すことで、どの判断が問題であったか振り返る事ができる。問題が生じても、中心的コンセプトを殺さないで対策を講じるためには、こうした判断のプロセスが記!され、共有されていないとどうしようもない。場当たり的な対応が、傷を深めていくだけである。<P>そんな経験を会社勤めの最中に数限りなく体験した。<P>本書に書かれていることは、そうした苦い経験にいちいち共鳴するものがある。
前半は文系の読者にも面白く読めるが、<BR>何だか後半になるとややトーンダウンする。<BR>全体の構成がいまひとつ。<BR>しかし「失敗学」自体は大変興味深い。<BR>他の著書に期待。