本書は、タイトルどおりにスターバックスの裏側を読む読み物としても面白いが、マーケティング分野におけるブランド論としても秀逸な一作だ。<BR> ブランドについて語られている本は数多いが、本書で語られているブランド論には他人とは思えないほど直接感性に響いてくる。<P> やや個人的なことではあるが、私は、とあるはちみつ屋でマーケティングをしていたことがある。当時、私は、はちみつのブランド化のために、はちみつの価値にこだわり、はちみつの採集方法にこだわり、はちみつの産地にこだわり、はちみつの蜜源植物にこだわり、はちみつの製造にこだわり、そのこだわりとはちみつの価値をお客様に伝えるための表現方法、それはつまり瓶やラベル、出荷用の箱に始まり、広告や商品同梱の販促物、受注時の電話応対に至るまで、我々の哲学を伝えることにこだわり、そしてそのこだわりを徹底するためにすべての社員の教育にこだわると言う毎日を送っていた。<BR> 本書には、それて同じこだわりが、ブランドと言う言葉で随所に語られている。<P> 企業が巨大になればなるほどそのこだわりを維持することは難しい。<BR> 著者が在籍していたナイキやスターバックスのような巨大企業で、あれだけのブランドイメージを構築するのは至難の業である。<BR> その至難の業をいかにして成し遂げたか、本書にそのヒントが描かれている。<P> かつて日常の中であまり価値観が見いだされていなかったものをブランド化したという点においてこのナイキとスターバックスの両社はとてもよく似ている。<BR> その両企業でブランド管理に携わっていた著者の言葉は、とても深く、実践的で、そして何より登場するエピソードがユニークで、読み物としても面白い。
スターバックスのマーケターがこれまでの経歴から<BR>エピソードを交えて、ブランディングとマーケティングの<BR>考え方を説いている。<BR>内容は、スターバックスのことよりも著者の前職であった<BR>ナイキの印象の方が強かったように思うので、「スターバックスの<BR>本」と思って読むと、やや期待が外れてしまうかもしれない。<P>しかも、ナイキやスターバックスといったグローバルな大企業の<BR>マーケターの言うことなので、少しスケールが大きいというか<BR>日本の中小企業のマーケティングに、そのまま通ずるわけでは<BR>ないでしょう。しかし、ブランディングの考え方やエピソードは、<BR>非常におもしろく、読み物としても秀逸です。
「ブランドそのものでは人を幸せにすることはできない。人があることをするときにブランドが力を貸して、多大な幸福をもたらす」がブランドの定義になります。"Just do it!"のナイキ、緑模様のブランドイメージを確立したスターバックスでブランド・マーケティングを担当してきた著者がブランド確立への秘訣を示します。<P>著書の中でも示されていましたが、ブランドを構築する前に以下の条件が成り立っていないといけません。<BR>(1)消費者に訴える強い商品がある<BR>(2)ちゃんと機能するビジネスモデルがある<BR>(3)クリエイティブを検討する上で常識をわきまえていること<P>その上でかつ、そのブランドを提供している社員一人一人がブランドに自信を持って働いていることが最も大きな条件になるのではないでしょうか?<P>「ブランド」という言葉が巷でもよく耳にするキーワードとなっていますが、それを求める前にまずは自分の足元をしっかりとしたものにしてから・・・実例や本人の多くの経験から示してくれる貴重な一冊と思われます。