小関智弘さんは旋盤工であることにこだわり続け、仕事の中から傾聴に値する職人論を送り出してきた。その小関さんが文筆に専念して書かれた第一作、と思われるこの書物は真に読みやすいものとなった。<P>技術者としての綿密な分析と、『春は鉄までが匂った』という表現に象徴される文学性がほどよく調和して、読んでいて楽しいが技術と技能の何たるかを教えてくれる教科書になっている。<P>技術論と言う学問がかつて存在したが、現場を忘れた教条的な議論となって、いつか忘れられてしまった。小関さんのこの書物は新しい技術論の誕生を感じさせる。小関さん自身は『職人学』というタイトルにこだわるだろうが。職人を描きながら技術・技能の本質に迫ると私には感じられる。<P>対人関係の仕事を含めて、すべての仕事に技術と技能が存在する以上、自らの仕事の意味を考えたい人は即読むべし。
ハードカバーの単行本なんて滅多に買わないのだけど、つい買ってしまった。著者の小関智宏氏は50年ほど旋盤工として働いてきた職人さんである。すでに amazonでレビューが書かれていますが、まさにその通りで「職人学」と言うより「職人道」ですな。また、精神論だけに終わっていなくて、実際の治具の例や缶詰の例なども図解で載っており勉強になります。私自身は昔はハード屋で今はソフト屋に分類されるのでしょうが、ソフトウエアにも共通する話があちこちに載っていて参考になります。その一例を、あとがきからの一文で挙げてみましょうか。「製品としては成熟した物に見えるが、それを作るプロセスは決してありきたりではない。」一つ一つのシステムもいろんなプロジェクトマネジメント技術やプログラム技法・テスト技法の工夫・改良・道具立てで良くすることができると思います。難しい物を作れといわれたときほど燃え上がる職人気質を、私ももう一度持ちたいなと思いました。
自分は機械系の技術者だと思う人は読む価値がある本です。標準化だのコストダウンだのと、そこそこ大きな会社でセコセコやっている立場からみると、この本にでてくる人たちはほんとにカッコイイおじさん達です。私も学生時分、研究室で毎日旋盤を回していたので、作者の話はよく理解できました。ジグは英語だと語られてますが、私はその響きからずっとフランス語だと思っていました。<BR> とにかく、コストダウンだの効率化だので辟易した機械技術者にお薦めの本です。巷で一人前気取りでいる職人さんが読むとちょっとショックかも。実際、私もこの本にでてくる様な気質の職人さんは2~3人ぐらいし知りませんし、他の連中はまがいもんばっかりだ。<P> タイトルに『学』とありますが内容からすると『考』の方がいいかもしれません。『道』とするのもまたいいかと。とにかく星は5つです。