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食肉の帝王―巨富をつかんだ男 浅田満 ( 溝口 敦 )

浅田ややってきたことに比べれば日ハムや雪印食品の偽装など可愛いものだ。<BR>世の中にいる本当の悪者はなかなか表には出ないのだということがよくわかる。<BR>そうは言っても、同和問題という日本の負の部分を逆手にとってのし上が<BR>った男の物語だけに、実のところ浅田満という人物に対しての嫌悪感はそ<BR>れほど高まらなかった。<P>だが、同和問題批判は従来の日本社会ではタブーであったはずなのに、<BR>どうして今回こんな形で溝口は公にできたのだろうか。<BR>溝口自身があとがきで言うように、国の同和政策は転換を遂げ、同和に<BR>名を借りた富の移転を許さなくなったことが大きいとも思える。<BR>しかし、書中に警察関係者の裏情報的なものがいつくかあったことから、<P>実は司法当局のお墨付きと言うかークがあったのではないか、などと<BR>思ったりもしたが。不法に巨利をむさぼる男に対する世間の批判を喚起<BR>することが目的では、などというのは穿ちすぎか。

 今の日本にはややこしくて、うっかり触れられないようなテーマがいくつかある。いわゆるタブーであり、典型が同和であり、追及的な立場からは山口組もその一つだろう。本書は同和と山口組、食肉というややこしさの三位一体を真っ正面から取り上げて、これまで世間に知られていなかった事実を白日の下にさらしている。が、書き方は穏やかで、日本一の食肉業者ハンナンを率いる浅田満氏を俎上にのせながら、必ずしも声高に断罪はしていない。彼が行政や社会システムを使ってどのように巨富を築いたか、ある種の「成功者」物語としても読める。「あとがき」によれば、去年の夏から秋にかけて「週刊現代」で連載したものに加筆し、再構成したようだが、本書のもとになった連載は編集者が選ぶ雑誌ジャーナリ!ズム賞の大賞をもらったらしい。おそらく「タブーに切り込んだ」と評価されたのだろう。鈴木宗男議員や渡辺芳則組長など、著名人と浅田氏とのかかわりなどが詳しく記され、さもありなんとうなずかせる。一気読みするほど面白い。

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