著者は長年、新日本プロレスのレフェリーを務めてきて、プロレス界のウラのウラまで知り尽くした人。プロレスという「芝居」が如何に作られてきたのかを説明し、今後のプロレスのあり方を提案してくれます。<P>プロレスに筋書きがあることくらい今となっては常識ですが、ここまで裏事情を暴露されると、逆にプロレス(芝居)の奥深さを知ることができます。私はプロレスぎらいの総合格闘技ファンですが、かなり興味深い内容でした。両者を混同させずに共存させるという意味で、著者の意見はとても参考になるものだと思います。
今日のように情報化が甚だしいと隠せないものがどうしても出てくるわけである。<BR>人の全盛期なんてものは10年もあるわけがない。しかし、商業的な成功を維持するためには、全盛期のように見せかけることも必要となるのである。思えば金曜日の8時50分に近づくと「延髄切り」がお約束のように披露され、スリーカウントともに番組提供企業のテロップが流れて来たのを思い出す。<BR>その15年前、馬場と組んでいたときの猪木はやられ役で弱いと思っていたが、その2~3年後、ストロング小林と試合をしたときは(どっちが猪木でどっちが小林か見分けつかなかった)、猪木が強く見えた。多分、それが本当の全盛期だったのだと思う。<P>それからは、プロレスという枠の中でのプロレスが続いていたのだろうが、情報化社会は海外のバーリートゥード等をほぼリアルタイムで紹介し、マイナーな世界でさえ表舞台に立つようになった。もうごまかしは通用しない世の中になったのである。<BR>この本は、そういった情報公開の書である。
単行本で出版された時に読み、今回文庫化されるまでの間、自分の中で記憶に残るいくつかの試合を改めてビデオで観て、再確認・再堪能しました。種明かしを知ったところで、凄いマジックはやっぱり凄いですし、仕掛けを知ったところで、名勝負はやっぱり鳥肌ものの凄い試合でした。<P> 真に情報公開されたものだけがメジャーなものとして生き残る世の中に、どんどんなっていくものと思われます。政治も行政もエンターテインメントもスポーツも。その意味では、日本にプロレスが残っていこうとしているのなら、こういう本が出ること自体も避けては通れない道ではないでしょうか。<P> 著者は、単行本が出た後、それまでの人間関係が変わった、かなり関係者から辛らつな意見をもらったとのことですが、プロ!スラーもプロレスマスコミの方も、情報公開した上で堂々としていればいいと思います。せっかく自分達がファンから隠しながら営々とシステムを築き上げてきたのに、と著者を批判したところで、この本が出る「以前」の状態には、もう戻らないのです。読んで離れたファンも居るでしょうが、読んで留まったプロレスファンも居るでしょう。レスラーおよび関係者には、この本を読んだ人に見くびられるのではなく、感動させるものを提示してほしい、と切に祈ります。