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医師としてできることできなかったこと―川の見える病院から ( 細谷 亮太 )

著者は聖路加国際病院小児科医師。本書は、著者が40代のときに20年間の小児科医師としての活動を振り返って、心に残る患者との触れ合いを回顧した『川の見える病院から──がんとたたかう子どもたちと』(岩波書店,1995年)を文庫化したものです。白血病など難しい病気の子どもたちとの心あたたまる触れ合い、無念の思い、家族との交流などのエピソード集です。<P>10年を経て文庫版として再刊されるのを機会に、50ページほどの「番外編・二百人の子を背負って──四国歩き遍路の十日間」が付け加えられました。2003年3月、勤続30年に支給された10日間の休暇をつかって四国を歩いた記録です。著者は7日間で室戸まで到達するほどの健脚ですが、成り行きで泊まった善根宿で叱られたり、慣れないコインランドリーの乾燥機にとまどったりといった事件もあります。<P>日常は、小児科医という仕事がら次々に問題を解決しながら多忙で寸断された時間を過ごす毎日なのでしょう。歩き遍路では、それと対照的に、自然の中で持続する時間にどっぷりと心身を任せる感覚を存分に味わっておられます。<P>「二百人」というのは、勤続30年の間に見送った子供たちの数です。表題の「できなかったこと」という言葉に、力及ばずその命を救えなかった子供たちへの思いがこもっているようです。

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