本書によれば不安・恐怖症は、パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害、社会恐怖症の4つに大まかに分類されるが、原因はノルアドレナリンやセロトニンなどの興奮性神経伝達物質の分泌バランスと、脳幹と大脳辺縁系の何らかの異常に共通されるようである。本書は不安・恐怖症のメカニズムを脳外科と脳科学の両側面から迫っている。私もどちらかというと心配・恐怖をよく感じる人間。精神安定剤も常用しているので、本書で紹介されてる患者さんの症例を読んでいるだけでもイライラしてくるのである。本書を読んで「やっと病気として認知されたか」と喜ばしく思う反面、もっとこの分野の研究を進めて、私を含めてこの病気に苦しむ人たちを救って欲しいという気持ちで胸が一杯になる。構造化ストレス社会!いう言葉も登場する昨今であるが、進歩至上主義はいい加減止めて、そろそろ「ゆっくりムード」で日常生活を営む社会を築き上げる必要があると思う。
私は今も高速道路が怖い。飛行機も、ジェットコースターも高いところもだめ。昔なら、根性なしとか、臆病者で終わらせられてしまっていた。でも、車酔いや船酔いとは違う。多分この本で多くの同じ悩みを持つ人々が社会の認知を受けたと思われる。また、こうした本を通して自分たちの苦しみを理解してもらえる機会ができたことが、本当にうれしかった。私の妻もまだ、本当に理解してくれているのか定かではない。まだまだ、一般の人には理解してはもらえない。精神科の医師は多少の理解はあるみたいではあるが、それを仕事としているはずなのに著者のような理解ができている医者は本当に少ない。現に私は通院しているときに半ば強引に高速道路に乗るように進められ、下手をすれば死んでいたかも知れない経験がある。もっと多くの人にこの苦しみを理解してもらいたい。私はまだ、この苦しみから解放されることを諦めつつも微かな期待を持っている。多分この苦しみを共有する人々しか仲間はいないかもしれない。でも、同じ苦しみを抱えている人々は大勢いることはこの本で分かる。いつかこの病気がこの本を通じて社会に認知されることを祈る。