表題どおり、著者は化学が化学式や周期表などを暗記する科目ではなく、主に電子が役割を演ずる原子の化学結合と分子の立体構造に着目することによって無機化学も有機化学もシステマチックに理解することができることを呈示しています。<P>でもこの本は、ある程度高校化学の知識を読者が持ち合わせていることを前提(電子・陽子・中性子からなる原子構造、多少の化学物質の化学式等)にしているので、それを知らないと最後まで読み通せない。他のレビュアーの方の言われるとおり、決して「入門書」ではないですね。「暗記しないで」のタイトルに惑わされて化学の全くの初心者がうかつに手を出すと「大やけど」すること間違いなしです(笑)。<P>反面「暗記科目」として化学を勉強してきた人にとっては「知識」とし!て積め込んできた様々な化学の現象に対して<P>「何でそうなるのか?」<P>という鬱憤が溜まっていると思います。かなりの思考力を要求してきますが、こういった化学現象の仕組みを、上記に述べたように原子結合、立体構造といった原理に基づいてシステマチックに理解することができます。特に有機化学の諸現象については鬱憤がかなり解消されるのではないかと推測します。実際このようなシステマチックな方法論が確立することによって、コンピューターによる分子構造や化学反応のシミュレーション・ソフトが開発されて、それによる研究方法が今日の最新の化学の花形にもなっている訳です。<P>化学という学問が本来どういうものか体得したい方、時間がかかってもいいから納得しながら化学の現象を理解したい人向け本。<P>ただし、相当考え込まされますよ…。
この本は、有機電子論入門書であって、高校の化学入門書ではないので、化学を学習する前の人が読んでも理解は難しいと思われる。化学をある程度学んだ人が、化学結合や化学反応になぜ?という疑問をもったときに解決するためには有効だと思う。大学で化学を専門に学ぶ人のための入門書としてはよいと思うが、決して化学嫌いな人の入門書ではなく、暗記しないでも読み進むことができるというだけである。
この本は、化学反応、化学結合、物質の構造、無機化学から有機化学へと幅広い範囲に亘って、電子の挙動一つで実に系統立て説明し切っている点が見事である。自分が大学受験の時に予備校でこの本と同様の解説を聞いたことがあるが、その時“目からうろこが落ちて”化学を学ぶことが非常に楽しくなったことを思い出した。おかげで目指していた大学の化学科に合格することができた。将来、化学を専門に勉強したいと思っている学生(高校生、浪人生、大学の教養課程の学生等)に特に強くこの本を薦めます。化学は種々雑多な分野の集まりではなく、逆に「電子の挙動」を通して色々な分野に分かれており、化学とはそれを追求する学問であるということが分かるでしょう。