脳や記憶の秘密について知りたいという欲求は誰でも持っているだろう。そんな知的好奇心を大いに満たしてくれた上、さらにおまけがついてくるような一冊。<P>脳科学について何も知識をもたない人でも基本的な事項からわかりやすく解説してくれるので無理なく読める。それでいて単なる入門書や知識の羅列に終始せず、最新の脳科学という著者自身が活躍する舞台にすんなりと連れて行ってくれる。そこは脳科学者達が持ち寄る最新の成果にあふれ、様々な疑問が次々と解決されてはまた新たに浮かび上がってくるダイナミックな舞台であることが感じられる。そしてその舞台で活躍する著者自身の喜びと情熱が、読者に熱く語りかけてくる。 記憶について知りたい人はもちろん、研究者になりたいという若い人にぜひ読んで欲しい。
池谷裕二さんとは大学、大学院を通じての同僚なので、その分差し引いて読んでほしいが、この本は記憶に関する神経科学の最新の知見を興味深く読ませてくれる良い本だ。<P>まず、構成がよい。海馬が記憶に重要であることから始まって、最新の知見を散りばめ、スクワイアやタルビングの心理学的枠組みへとつなげる。エピソード記憶と意味記憶の関係とかは本当はいろいろややこしいのだけど、うまいことストーリーが流れている。教科書丸写しではなくて、よく消化してから書いている証拠だ。このあとに神経細胞、シナプスについての記述があって、LTPとは何かが説明される。いきなり本の最初から神経細胞の説明に入ったらうんざりだから適切な構成だ。そして6章の「科学的に記憶力を鍛えよう」に入っていく。<P>そしてこの6章が面白い。実際のところ、ここで書かれていることは先述のエピソード記憶、意味記憶、手続き記憶などの枠組みを使った話であって、「最新脳科学が語る」というほどのことではない。けれども池谷さんの経験と信念がにじみ出た人間味あふれる文章になっていて魅力的だ。たとえば、「どの科目でも優秀な成績をとることができる学業の優れた人は、一つの科目すらもマスターしていない人から見ると超人的な天才に見えますが、しかし、それは生まれつき頭がよいというよりも、むしろ、いろいろな科目の学習能力が相乗しあった結果なのです。(216-217ページ)」なんてのは家庭教師をしていた学生に教えてあげたいセリフだ。<P>この本は、2000年あたりの国際科学雑誌の報告までの最新情報を取り込んでいるが、これは他の本にはない特色だ。人やサルの研究に関する言及が少ないのは専門家としては不満だが、1冊の本に全てを詰め込むことはできないからちょうどいい線だと思う。<P>この本を記憶の脳内メカニズム研究の現状に興味のある全ての人に薦めます。
医学という科学界の中でも新しい技術がどんどん出てくる分野の本です。<BR>この本の著者は、大学の助手をしている30代という若い方です。<P>新しい技術や新しい情報を書いてあり。また、若い人の切り口でかなり理解しやすいと思います。専門的な話もありますがまったく理解できないという訳ではないので、一度読むだけでなく、二度三度読んで理解するといいかと思います。<P>記憶の種類、仕組み、効率的な記憶方法、新しい技術までと、ひとつの流れとして理解しやすく、説得力のある本だと私は思います。今できる記憶の強化方法と記憶の新しい技術を知ってみたいと思っている方はこの本を読んでみるといいかと思います。