『シミュレータ入門』とあるがシミュレータのいろはを教えるものではない。懇切丁寧なのはシミュレータソフト"CM60S"のメニュー等の翻訳と解説であり(それ自体日本語で提示されるのは有り難いことではあるが)、シミュレータの実践法は承知のこととしてわずかなページを割かれているだけである。本書の過半を占める第4章に当たる「デバイス・セレクション」は著者の労作であるが、これを宝の山にできるのは電子回路の十分な知識を持つ「電子科学生」であろう。
いままで電子回路の設計、実験は実際に回路を組み立て、オシロスコープや電圧計、各種の計測器を用意しなければできなかったものです。それがこの本を買えばCD-ROMが用意されていて、買ったその日からシミュレーションできます。これがあれば電子回路の学習に大きな力になるでしょう。
趣味で電子工作をしているが、作った回路が希望どおりに動くかはいつも不安に思う。もちろん失敗から学ぶことは重要だと重々承知しているのだけれど、できれば(高価な部品を壊してしまうような)リスクは最小限に抑えたい。そんなときに電子回路シミュレータが有効だ。でもこれまで電子回路シミュレータはプロのためのものだと思っていた。本書にはアマチュアでも気軽に導入できる電子回路シミュレータがCD-ROMで付属し、試行錯誤だけではない電子回路の世界への扉を開いてくれる。<BR>私も本書をもとに電子回路シミュレータを導入し、さっそく自分の回路のチューニングを図ってみた。