あっという間に読み終わった。知的に興奮させられる内容だ。<BR>人はなぜ,古来からこんなにも「死」にこだわるのか。なぜ,現代は「死」を覆い隠そうとするのか。日々の仕事に追いまくられている頭で考えてみた。<P>「死」を意識しない日常に生命の瑞々しさはない。日常の雑事に疲れた頭をリフレッシュするのに本書が明らかにする内容は,ミステリーの謎解きをしているように新鮮で興奮させられる。<P>だからといって,神話を解読することにより社会的に成功するための人生訓を導き出せるものではない。高度な精神性を発揮しているミクマク・インディアンの神話はそれを物語っている。人間は,生物と社会的存在しての矛盾を自覚することより,徹底して社会的存在として振舞うことが成功する近道なのかもれな!い。ただ,精神的に破綻しないためにも神話は現代社会にも通用する。神話は矛盾を抱える人間を許容する。
大学の講義をもとにしているからであろうが、神話という題材を素人にとっつきやすいように噛み砕いて説明してくれている。我々にとっても身近な存在であるシンデレラの話を中心に神話的論理を明快に語り、神話の奥深さと魅力を十二分に伝えていると思う。美味しいカクテルのような本であり、読みやすくかつ知的な刺激に満ちている本だ。
哲学の祖先である神話についての入門書。後半3分の2は、世界中に広がるシンデレラ神話をめぐり、神話の象徴性や論理を説く。大学での講義がもとになっているせいか、中沢氏の本にしては気抜けするほど簡単に読める。