"被害者、何千人"と一言で言ってもいまいちピンとこない。それらは、その事件の規模を表す数でしかない。テレビや雑誌で取り上げられるのは、事件の確信をついた本質的なものではなく、脚色を帯びたいわゆるエンターテーメント的なものでしかないんだと強く感じました。何千人といわれた被害者の生活や体験を知ることで、ひとりひとりに顔ができ、その苦しみや今でも抱え込んでいる悩みを(少しではあるけれど)理解することができました。当たり前のことだけれど、被害者の方にも日常があり、家族があり、生活があったんだと。そのことにすごく衝撃を受けました。私の中でどこか、サリン事件は別世界で起こった特殊な事件として受け取っているところがあったけれど、都会のど真ん中で日常で起こった誰でも遭遇する事件だったんだと気付き、背筋が凍るような思いで読んでいました。この本に出合えなかったら、この事件について深く考えることもなかったと思います。私たち同じ日本人として、一番知るべきことを教えてくれた本だと思います。
あれから8年の歳月が流れました。実際の話、あれほどの事件も時には抗えず確実に風化の道を歩んでいます。あの事件の後、駅構内に何か置いてあるといっては大騒ぎになっていた、ような記憶があります。<BR>この本はこうした片隅の記憶を一気に当時の現場に引き戻させる力を持っています。<P>我々庶民にとっては天災も含めこうした事件・事故はある日突然に何の前触れもなくいきなりやって来ます。そうした際の人間個々の対応力、というか意識の持ち方みたいなものが手に取るように迫力をもって伝わってくる本です。<P>地下鉄サリン事件は被害者にとってのいつもの日常から非日常への変化、そして同日同時刻にたまたま近くにいただけの傍観者との明確な違いがショックなまでのコントラストを伴って具現化され!た事件である、ということが著者のこういう掘り下げ方をしないと見えてこない・・。<BR>このことが大きなショックとなって読後の自分に襲いました。<P>1ページ上下段2段構成で777ページ!!の長編ですが各被害者の意識に入り込んだドキュメンタリーとして全く飽きることなく読み込める作品です。<BR>(777ページ3セブンというのは著者の何らかの意図?でしょうか??)
この本がインタビュー形式の本だという事は知ってました。<BR>発売されてすぐ買ったのに、何年も本棚に眠っていたのは多分そのせいです。<BR>一度もページを開いてなかったのにすでに古本の感がある本書を開いたのは、単純に読む本が尽きたからですが、後悔しました。<BR>もっと早く読めばよかった!<P>自分はTVやその他マスコミの、ほんっとに薄い情報でしかこの事件を知らなかったんだな・・と痛感しました。<BR>被害にあわれた方が100人でも1000人でも10000人でも、ディテールの無い報道では、何も伝わらないんですね。<P>それにしてもいつまでやってるんですかね、、、裁判。