色々なものが唐突に消えていく島を舞台にした作品。<BR>鳥が消え、帽子が消え、フェリーが消え、<BR>虫食いのように、あいていく穴を見つめながら、<BR>何かを失ったという記憶も失いながら生き続ける人々。<BR>不安定で、はかなく、切ない、美しい世界の物語。
とてつもなく透明で美しい作品。<BR>この世界を遜色無く映像化できるならばとても儚く美しい作品が出来るでしょう。<BR>CGやら人形やらアニメーションやら実写を織り交ぜて、全体的にはロシアのアニメ作家が作るアニメのような簡素で寒々しい空気が覆ってて・・・なんて妄想をしてしまいました。<P>この透明感と美しい世界を構築した点で☆5つ!!!<P>読みながら何度も感動のため息をつかされました。
小川洋子さんの小説世界は、どれもとても変わったものです。この物語では、ひとつずつものが消滅していきます。たとえば小説、声、など。あらゆるものが、次々と取りさらわれていき、やがて人々の記憶からもそれらのものは消滅します。しかし、その中にも忘れる事ができない人たちもいます。彼らは危険人物とみなされ逮捕されてしまうのです。主人公は忘れることができない男性に恋し、彼をかくまいますが、やがて、自分自身の体の一部も失い始めます。物語は、しずかに、そして大きな消失感をともなって進んでいきます。小川さんの文章には、身体感覚がとても鮮明に描かれていて、それでいて、限りなく透明です。