時代物が好きで、ミステリが好きで、超常現象も本で読むぶんにはわりと受け入れられる、そんなわたしにはあまりにもぴったりの宮部さんの時代物です。お初も本書で17歳。ひとつ年をとりましたが、キャラクター的にはあまり変わりなく、残念なようなほっとしたような、で結局安心して読んでしまいました。どちらかというと右京ノ介様が少し、ほんとの少しだけ大人になったような気もします。そして右京ノ介様の父上が前作よりもずいぶんとお初びいきになったのが意外といえば意外。しかしなんとかこの美しい娘(らしいことが本書のはしばしから伺えます。当初は平凡な町娘かと思っていたのですが・・)>お初を息子の嫁に!と心で叫び、おくてな息子のサポートに走っているのが微笑ましい限りです。新キ!ラも人間に限らず登場していて、これからもシリーズにちょこちょこと現れてくれそうなところが先の楽しみですね。<P>このシリーズはともすればお初の「霊験」でなにもかもがたちどころに解決!となってしまうところを、お初の見て聞いた「霊験」がなんだったのだろう、と現実の捕物とともに推理していくところがさすが宮部さんだなぁと唸れます。
宮部みゆきさんの作品は、たいていおもしろいです。でも私は、時代物が好き!そのなかでもこの『天狗風』はお気に入りです。人間が内側に抱えている心の暗い部分の描写がたまりません。登場人物・登場動物のどれをとっても魅力的です。
読み始めたら一気に読ます。宮部みゆきの力量は健在。「震える岩」でも感じたことであるが、レギュラー入りを果たした右京之介は以前より存在感は増しているものの、せっかくの算学がまだ活かし切れていない。使いようによっては非常に独創的な探偵になると思うのですが。お初の霊感と彼の算学で世を震撼させる大事件を解決する、そんな物語を第3段では期待しています。<BR>今回は「美しさとは何か」がテーマである。残念なことに宮部に欠落しているものを発見してしまった。それは人を惑わす色香です。どうもお初ちゃんはまだまだ子供みたいで、そのことが作品全体の描写にも影響しているみたいです。本当は今回の妖怪、妖しい美を描くには絶好のチャンスだったのですが。