毎回中心となるテーマを持っている本シリーズ。膨大な知識と筆力で、万人に知らぬ間に難解なテーマを嚥下させる。例えば「姑獲鳥の夏」では社会病理学の特に逸脱行動理論を背後に持つ。<P> 本作では日本におけるミステリや幻想文学の系譜をテーマに、特に山田風太郎に対するオマージュ的意味合いを散りばめる。山田風太郎の世界観を甦らせながら、ミステリの傑作への細かいオマージュやパロディにより、この一作で日本ミステリ界の小旅行が楽しめる。より一層楽しむためには、少なくとも山田風太郎の「黒衣の聖母」や「夜よりほかに聴くものなし」の第4話「必要悪」は読んでおく事をお勧めする。
やはり面白い。全く異なる事件が、見方によっては同じ構造をしており、その背後に居る誰かが黒幕らしい。これだけで、推理小説3冊分の内容ですが、ここに「京極堂」が登場することで、更に面白い世界が構築されています。<BR>更に、1作目以来のシリーズ(僅か半年の間に起こった4つの猟奇事件)に関連性を持たせる役目を果たしています。<P>しかし、文庫版を出す度に、大幅な加筆を行っている作者。より完全な京極ワールドを構築するのは良いが・・・シリーズが進む度に厚さも更新されていく京極堂シリーズ!次は、サイコロ型の文庫本になるのか?重い!かさばる!もう、次回作は分冊にして欲しい!
物事には因果関係があります。原因があって結果がある。しかし結果はまた、原因となりうるのです。そしてある原因と結果は別の顔をも持つ……。世界は階層的多重構造によってどこまでも複雑化して成り立っています。一つの原因と結果だけを取り出しても、世界を理解することはできません。それでも人は、一時の安寧の為に一部分を切り取らずにはいられない。それが本書の核です。<P> 関東のあちこちで起こる猟奇事件。それらの事件で見え隠れする巨大財閥と密接な関係にある千葉房総の旧家の女性たち。木場修の推理が冴え、今回も絶好調の探偵、榎木津。そして、京極堂が請われて古書店から重い腰を上げた先に待つものは……? 京極堂の言葉の奔流に流されましょう。これが毎度の私の楽しみです。