父が体を壊したことをきっかけに、ヒロシは田舎にやってきます。はじめは言葉の違いや、転校生的な扱いも受けますが、友達と触れ合いながら、成長していく様子が描かれています。クラスの障害児について悩んだり、親友の喧嘩につきあったり、万引きするクラスメートと関わったり、イレズミを入れたお兄さんと交流したり、さまざまな体験が子供の視点からうまく描かれているので、引き込まれます。著者の表現力のうまさに感動するとともに、その背後にある温かいハートを感じました。
小学校入学から小学校卒業までの、6年間の出来事を綴った連続短編です。<P>重松さんの作品にはめずらしく、ほのぼのとしていて胸に突き刺さるような描写のすくない作品で、ライバルができたり、好きな女の子を追ってみたり、思わず自分の少年時代と比べて懐かしさがこみ上げてきます。<P>特に最後の少年時代から青春時代に飛び込むシーンは格別に感慨深いものがあります。
私は今までに、重松清さんの書いた物語をいくつか読んでいる。書店で彼の本を見つけると、オッ、と嬉しいような恥ずかしいような気持ちになり、自分ではすっかり重松ファンだと思っている。<P>さて、そんな私が、今まで読んだ重松物語の中で一番気に入っているのが本書である。私はこの物語を読み終えた時、温かくて、幸せな気持ちになった。それは、宝くじで一億五千万円を当てたようなもの凄い幸せではないけれど、一日一生懸命働いた後の入浴みたいな素朴な幸せだ。心が温泉に入ったみたいに温かい気持ちになれたのである。「半パン・デイズ」は主人公・ヒロシの六年間の成長物語。予定の無い週末など、懐かしい自分の半パン・デイズに思いを馳せるのもいいのではないだろうか。<BR>この本で、もう一つ面白いのは、中場利一氏の解説である。レビューを書いている今でもパソコンの前で誰か私のように中場氏の罠に引っかからないかとワクワクしている。