|
| 森のうた―山本直純との芸大青春記
(
岩城 宏之
)
昨年亡くなった山本直純氏と著者の芸大時代の生活をつづったもの。随所に著者独自のユーモアが織り込まれていて、飽きない。文体も魅力的だ。今日の制度化されつくした大学制度と比較すると、なんとものんびりしていて隔日の観がある。話題は、恋愛のこと、二人の共通の関心事であった指揮のこと、師匠の一人である渡辺暁雄氏のこと、斉藤秀雄が編み出した(?)いわゆる斉藤理論のことなどなど、多岐に及んでいて興味が尽きない。冒頭に掲げられている若き日の著者や山本氏の写真も貴重だ。これから音楽家をめざそうという人達、とくに指揮志望のあなた、また古き良き時代の芸大のことを知りたい人達に薦めたい。 打楽器奏者でもある著者が指揮者の道を歩みはじめるまでのゆかいな思い出話の数々。同時代に音楽を志した仲間たちとの交流が生き生きと描かれていて楽しい。若かりし頃の直純氏のエピソードにほろりとさせられます。
|