この謎めいた題名にまず惹かれ、本書を手に取りました。そして読み進むうちに、<BR>この別世界で繰り広げられる日常の美しさ、そこはかとなく漂う悲哀や儚さに<BR>夢中になっていく自分を感じ、読み終えても尚続くその余韻を今は楽しんでいます。<P>この物語は、全体のトーンに派手さこそありませんが、ひとつひとつの場面や<P>情景は実に鮮やかで美しく、印象的かつ魅力的なシーンが随所にちりばめられており、<BR>作者の才能にはただただ感嘆させられます。<P>何より、私自身が大好きになったこの作品を多くの人が同じように素敵な物語だと<BR>感じてくださっているのも嬉しい限りです。この作品を読んでいるあいだは、<P>私にとってもまさに夢のような時間で、ほかの恩田作品を読むきっかけを作ってくれた<BR>本書にはとても感謝しています♪
「殺人鬼の放課後ミステリ・アンソロジー2」の中の「水晶の夜、翡翠の朝」からこの本にたどり着きました。私は乙一さんの本も好きなんですが、記憶喪失からの自分探しが乙一さんの「暗黒童話」と共通していて、楽しめました。といっても、手法は全く違うのですが。恩田さんは場面の描き方が劇画的で、様子を思い浮かべることが容易だと思います。今回のお話も、建物や庭、非日常的な生活が目で見たように思い浮かびました。怖いけど、こんな学園で生活してみたい。。。是非、「三月は深き紅の淵を」も読んでみたいと思います。
三月に新学期が始まる不思議な全寮制の学校に、主人公が二月の最後に日に転入するところから物語は始まる。<P>キャラクターはどれも非常に魅力的で、彼らを見ているだけでも楽しい。話の3割近くを占める風景描写はとても神秘的で、私を作品世界にぐいぐい引き込んでいった。この世界観はどこかハリーポッターに通じるところがある。ただ大きな違いは、ハリーポッターの何もかもが輝いて見えるような印象とは逆に、こちらは全体的に灰色がかったイメージをうけるという点だ。これも魅力の要因の一つである。本当に全てが魅力的で、私の少ない語彙ではすばらしいとしか言いようがない。<P>恩田陸の作品の特徴として、謎が10あったら8までは謎解きをして、1はじっくり考えればわかり、残りの1は謎のままというのがある。謎を残すというのは、読後も世界から抜け出しにくくするための技法であると思われるが、よく消化不良とか言われる原因でもある。この作品においても同じことがいえる。覚悟していないと、読み終わった後にもやもやすることになることはうけあいだ。<P>また、この話は同著者の「三月は深き紅の淵に」という作品に大きな関連性があるようで、先にそっちを読んだ方がいいのかもしれない。ただ私はそっちは未読だが、十二分に楽しめた。<P>未読の方には、是が非でもこのファンタジーワールドを体験して欲しい。自信を持ってオススメできる一冊だ。