ドイツの化学者フリードリヒ・アウグスト・ケクレは、肘掛け椅子に座ったまま寝入ってしまったときに目の前で原子が踊り始め、これをヒントにベンゼンの化学構造の謎を解明した。このような睡眠中の思考を本書では「スリープ・シンキング」と呼んでいるが、これを意識的に問題解決に役立てるために18のステップに分けて系統的に説き明かしたのが本書である。著者はカウンセラーであるので具体例が豊富である。例えば気の合わないルームメートと別れたい大学生の例、英語を専攻すべきか生物を専攻すべきか悩んでいる大学生の例、仲の悪い実母の事でくよくよ悩んでいる女性の例、作曲をしたい一心で弁護士をあえて廃業したが作曲に行き詰っている男性の例、この他多くの事例についてスリープ・シンキングによる打開の経験が語られている。<P> 人間はだれしも夢を持っているものだが日々の安定した生活のためにあきらめている事が多い。このような場合についても意識的無意識的なスリープ・シンキングの活用によって自分の夢を再発見し有意義な人生を歩み出した例が述べられる。例えば、二コールは中小企業のオフィスマネージャーとして働いていたが、ストレスで2週間をベッドで過ごした。ようやく熱が下がり、気分良く目覚めた最初の朝、彼女は自分が明言するのを耳にした:「絵を描かなくちゃ」。これを機に彼女はカルチャーセンターに通い始め、やがてウエスタン画家としての活動を始めた。<P> 本書を読んで、夢の記録・分析も非常に興味深いが、就寝前に頭を整理して自分の課題を絞り込むプロセスも、スリープ・シンキングを実践するか否かにかかわらず有意義と感じた。
スリープ・シンキング―――「睡眠中にひらめた考え」が自分の抱えている悩みを解決し、創造的なアイディアが浮かび、生活習慣や性格までも変える……「なんとおめでたい!でもほんまかいな……。」<P>たしかに多くの自己啓発書に比べて、実践できることであるし、(積極的に夢を見ようとするだけ!)悩みや問題点を整理していく過程は、たとえ「夢のお告げ」がなくても解決への第1歩と言えるでしょう。<P>まだまだ「夢」の研究は人間のわからないところだらけなので、科学的な裏づけはないものの、脳の隠された能力に期待して、今晩も夢見るぞ!この本は寝る前に読まれることをオススメします。