米国のテロ事件以後、一挙に読まれはじめたハンチントンの著作の中で、一番取りかかりやすいのが本書。という私も、購入しながら未読の状態であったことを反省している。現在のメディアの論調の偏向性-テロ→国家の敵→世界同時不況加速→米国ガンバレ→世界が応援-に明晰なロジックと分析で反証を示す。テロ事件をめぐる現在の世界の状況を理解する最良の書。リアルな喫緊の視点を提供する現在の最重要書籍に間違いない。しかし、世界のメディアはどうして、必死になってハンチントンのインタビューを獲ろうとしないのだろう?本当に不思議だ!!
「単純すぎる」とか「複雑な利害を無視」という意見があるが、それは社会科学とは何かを全く理解していないからである。社会科学とは、事象を単純化し、モデルとして提示することである。「文明の衝突」に地図の例が出されていたが、それを読んでもらえばわかると思う。私は国際政治を理解する上で、このモデルは非常に有効であると思う。必要なのはおおまかな流れを示すことで、全てを説明できる必要はないのである。確かに例外はあるにせよ、世界史の趨勢はおおまかにこのように推移しているのではないだろうか。<P>ノーム・チョムスキーなどという人物は、評論家としては優れているかもしれないが、国際政治など何もわかっていないのであって、ハンチントンとは比べ物にもならない(少なくとも国際政治に関しては)。理想主義に基づいて行動しているのは日本ぐらいだと肝に銘じておこう。<P>ただ、注文をつけるとすれば、いくらなんでも手抜きし過ぎですよね。被ってる部分がかなりあるし。中途半端にドイツ哲学なんて図入りで出されてもねぇ・・・。「文明の衝突」の方を読むことをオススメします。
ある法則性を説く以上は、単純化は避けられません。同時に、その単純化故に明らかになる事も多いと思われます。日本の中国・韓国に対する二義的な現れ方など、明快に示されていますし、アメリカの他国との外交関係も一貫性を持ったものとして描かれているように思われます。ただ「文明」を手掛かりにするのであれば、冷戦時にそれがどのような形態をとり、さらにそれがなぜ今の形で表面化しているのか、など一定の切り口で記述しても良かったのではないでしょうか。冷戦時のイデオロギーと「文明の衝突」とが、断絶的にかかれているよう感じる部分もあります。鵜呑みにはできませんが、考える手掛かりを与えてくれるという点で、総合すると良書だと思います。