著者は実はかなり偉い人だと思うのですが、そんなことは横に置いて、英語に関する劣等感や失敗談を正直に書いているので、とても好感が持てます。この本は、実用的な英語の学び方を伝授するという目的で書かれたものだと思いますが、それよりも、アメリカという日本とは極端に違う価値観を持つ国での体験談や異文化の吸収の仕方、それらに対する著者の見解の方がいきいきと述べられています。
前半が筆者の英語学習体験およびそれを通した英語学習の勧め、後半は筆者の在米経験およびそれを通した考察、という風に分類できると思う。英語学習の箇所では、(1)英語のこういうところに苦労した、(2)それでこんなことをしてみた(考えてみた)、(3)そのときにはこんな資料(教科書)を使った、(4)結果としてどういう効果があったか(感じられたか)、が書かれているので、筆者と同じ目線で英語学習の方法を考えることができる。在米経験に関する箇所は、「こんなことがあって苦労しました」という単なる陳述ではなく、経験を通して何を思ったか、何を考えたかという筆者自身の考察が随所に見られ、本の内容をより濃いものにしている。
英語学習書としては以下の点で優れていると思います。(1)学習者の立場で、海外での失敗談も含めた経験が語られており、おもわずやる気が起きてしまう、 (2)参考文献が(入手方法も含めて)しっかり提示されているので、本書を手がかりに学習を発展させられる、<P>(3)つまづきやすい点を分かりやすく指摘するとともに、”コメディーはあきらめる”等、現実的なアプローチも紹介されている。<P> 一方本書は読者の日常生活にも一石投じるものかとも思います。それは、 (1)アメリカでの体験が、著者の一貫してポジティブな視点から力強く述べられており、読み手もポジティブになってしまう、<P>(2)アメリカ社会の紹介は、例えば日本の教育システムを考えさせるものであったり、英語学習にとどまらず、さまざまな面でも刺激的、 (3)この本を読んでぜひ留学しようという気になった、という3点です。 おすすめです。