書評 みんなこんな本を読んできた クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国
 
 
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クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国 ( 若桑 みどり )

歴史関連では近来稀に見る収穫だった。<BR>必ずしも歴史家に「傑出した」人間とは評価されない四人の若者が、時代の波と壮絶に闘い呑み込まれてゆく。その凛とした姿を通じて、権力者たちの歴史とは違うもう一つの歴史、清らかで温かい人間の歴史が描写される。<P>アカデミズムの歴史書と違い、著者は、歴史的事件を解説しながら一人称でときどき口を差し挟む。いわば著者の「顔が見える」歴史書である。だが、だからといって、主観的であるとか牽強付会であるとかいうことは一切なく、生半可な専門学者がとうてい及ばない綿密な資料調査に裏付けられた研究といえる。<P>キリスト教伝来の隠れた意図として、ポルトガルやスペインの日本侵略説は相当人口に膾炙していると思うが、それは一面の理解にすぎないことも明らかにされている。<P>世界帝国が形成された近代の夜明けに、極東の小国日本とはいえ中世的な幕藩体制を維持するには、恐怖と他者の排除をベースにした強力な思想統制が必要だった、そのためにこそキリシタンへの残忍なホロコースト的撲滅があったのだという指摘は興味深い。この時代の日本は、世界史的にみても稀な大規模な宗教弾圧と引き替えに、西洋近代の最も良き部分を受け入れることをも同時に拒絶してしまったのだ。その影響が現代の私たちにまで尾を引いていることは間違いない。

とにかく読みにくい本で、「天正少年使節ってどこかで聞いたことがあるから読んでみようかな・・・」程度の軽い気持ちで読むと挫折します。ほとんど学術論文に近い本で、ひとつの事件について、いくつもの文献からの引用を持ってきて、著者自身の判断を書くという姿勢で終始進むので、だんだん読むのが億劫になってくる。<P>でも何とか飛ばし飛ばし読み終えて、確かによく調べてあってすごい本だとは思う。<P>印象的だったのは信長という人が宗教や超自然的なことを全く信じていない超合理主義者であり、キリスト教の神父にとって仏教徒や神道信者よりも何よりも恐ろしかったということ。<P>また、現在私は香港に住んでいて、マカオは高速船で1時間のところにあるが、このマカオがこの天正少年使節の時代には非常に大きな港で、キリスト教の布教において重要な地点であったということが驚きであった。現在は香港に比べるとマカオは貧しくて小さな都市でしかないので。<P>とにかく本の書き方が私には難しすぎたので、できればこの著者に、より読みやすい形、できれば小説形式の「天正少年使節」についての本を書いていただきたい。

『クアトロ・ラガッツィ』を読み終えたときは、本当に涙を禁じ得ませんでした。<BR>550頁というボリュームでしかも膨大な歴史資料を駆使した骨太な作品なのに、とてもわかりやすく視覚的な文章で一気に読ませます。<P>キリシタンの立場から見た当時の日本は、たとえば堕胎や間引きが蔓延していたり、さまざまな暴力や貧しさに虐げられている人々がいたことなど、日本の資料ではなかなか浮かび上がらないいろんな問題が照射されていて、近世史の見方がだいぶ変りました。<P>無邪気な英雄賛美の大河ドラマや司馬遼太郎的な戦国時代への見方では決して浮かび上がってこない、名もないひとりひとりの庶民の顔や人生、そして権力者たちの素顔や苦悩や狂気が浮かび上がってきます。<P>世界に開かれていた時の日本の、もっとも輝かしい歴史の一コマであった、四人の少年使節へのヨーロッパでの熱烈な大規模な歓迎。<P>そして、少年たちが帰った時は、日本がすでに世界に対して顔を背けてひきこもってしまっており、ホロコーストにも似た大弾圧と虐殺が始まって・・・。<BR>その間の、日本と世界システムの関係や、なぜ日本は国を閉ざすに至ったか、誰がそういうように日本の道をとっていったかという丹念な歴史の追跡には、本当に目からウロコが落ちるようでした。<P>日本と西欧の関係とはいったい何なのか、今後我々が忘れてはならない歴史の教訓や寛容や自由とはいったい何なのか、そしてこの日本とはいったい何なのか。<BR>それらを考える際に、この本は今後不可欠になるのではないかと思います。<BR>近来稀に見る、のちの世までも残る名著といえると思います。

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