怨霊・穢れ・言霊の意味を見直し、歴史上での重要性を検証する「逆説の日本史」シリーズの第8弾。本書でも著者のオリジナリティあふれる学説をもとに、明快に日本史を紐解いている。人間関係を追うことで応仁の乱の実像に迫るだけでなく、応仁の乱が日本全体に及ぼした影響まで研究されているのが興味深い。足軽の登場、一揆の勃発、戦国大名の登場などは応仁の乱と深い関係があることを教えてくれる。<P> 本書では同シリーズの他の巻に比べて、「怨霊・穢れ・言霊」信仰の再検証という意味合いは薄くなっている。そのためアッと驚かされるような学説はないが、政治面だけではなく、文化面での検証をも重要視する著者の学説には一読の価値がある。
歴史は学生時代、暗記科目としてひたすら固有名詞などをテスト前に覚えるものだった。しかし、この本を読んで、歴史を学ぶ意義、現代の歴史的意味と位置をとてもリアルに感じることができるようになった。目から鱗の一冊。
室町時代をテーマとしたシリーズ8作目。今回も独自の視点で新たな歴史観が展開されており、1~7作目同様、歴史を学ぶ楽しさを満喫できる内容になっている。特に、日本史の分水嶺とも言うべき応仁の乱や国一揆・一向一揆の背景説明の他、能などの室町文化の解説が興味深い。また細川政元など、あまり知られていないがユニークな人物に関する記述も面白い。ただ前後の南北朝時代や戦国時代に比べ地味な印象は否めず、あくまでシリーズの中の1冊といった位置付けか。1作目から順番に読んできた方におすすめ。続編が待たれる。