資料第一主義で歴史的背景の欠如した従来の日本史観を再検討し、日本史に新たな視点を提供する「逆説の日本史」シリーズの第10弾。本書でも著者のオリジナリティあふれる学説をもとに、明快に日本史を紐解いている。織田信長は世間で認知されているような、合理主義者・無神論者ではなかったという注目すべき持論を展開しており、一読の価値がある。<P> 特に宗教的観点からの安土城の考察は興味深い。宗教的背景を重要視する著者ならではの大胆かつ精緻な分析に、読者は今までの織田信長像を覆されるだろう。
これより前のシリーズを読んでいないのですが、織田信長に興味があったので読んでみました。著者の強調する、宗教的知識に基づいた観点からの歴史考察の必要性については、確かにその通りだと思う。また資料的裏付けを偏重する歴史研究者への提言にも、ただの歴史ファンの私としては同意できた。そして、心理学の側面から信長の真の姿を追求してみよう、と呼びかけることの必然性にも納得がゆく。もちろんどんなに研究しても400年以上も前の人間の真の姿を解明できるとは思わないが、その過程を見てみたい、そう思わせる内容でした。
副題は『天下布武と信長の謎』。一冊丸ごと信長です!<BR>信長は本来穏やかな武将だった、信長は宗教弾圧などしなかった、安土城に込められた唯一絶対神を超越する総合絶対神への志向、など。大変面白かったです。次巻も気になります。<BR>なお、他の信長評論では秋山駿氏の『信長』、小室直樹先生の『信長の呪い』をお勧めします。<P>また、豪華絢爛な安土城の天主を復元した『安土城天主 信長の館』はいつの日か必ず訪れたい。