この巻で1番好きなのは、称徳天皇と道鏡の考察。なるほど、これを読むとこの時代の反逆者は、実は藤原仲麻呂(恵美押勝)であることが、よく分かるし、また充分に説得力のある史実や証言が詰まっている。また、続く光仁天皇桓武天皇以降、天皇家の黄金時代が短くはあるが続くのだが、藤原氏がいかに巧妙に取り入って、後の摂関時代の礎を作っていったか、などがよく分かる。作者も書いているとおり、平安時代は、ドラマとしての人気がない(そういわれれば確かにそうだ)が、どっこい、日本史としては、飛鳥奈良~平安時代がもっとも面白い、と思わせてくれた。やはり、怨霊と言霊の国なんだなあ。でも、称徳って、可哀想だなあ、合掌。
井沢氏の「逆説の日本史」シリーズ第3巻。これには、称徳天皇と道鏡、平安京遷都、万葉集成立、と3つのトピックが収められています。<P>学校で習う日本史は、ともすると事象の羅列に過ぎず、「何故?」に迫っていないことがよくあります。井沢氏の「逆説の日本史」は、①怨霊信仰、②言霊の存在、③学会の資料史上主義の弊害、の3つの主要ツールを使いながら、この「何故?」に明快に回答を与えていきます。歴史上の事件の背後にある、人々の生き方・考え方を掘り起こしてくれるので、「そうだったのか!」、と目から鱗が落ちるように、日本史への理解が深まります。<P>一つ残念なのは、学会批判がややくどいこと。もともと雑誌連載のせいかも知れませんが、文庫を1巻、2巻と読んでくると、同じ話が何!!も出てくるのが難点。<P>とにかくミステリー作家でもある氏の筆力は、ぐいぐいと読者を引き付けるので、読み終わるまで本を手放せません。日本史はつまらない、と思っている人には、特にお勧めのシリーズです。
シリーズ三巻目だが、言霊の威力、怨霊への恐怖などが力説されていた。内容自体はシリーズを通して興味深いが、一巻から読んでいると、このあたりで学会批判がくどく感じられる。井沢氏の意見はいちいちもっともだと思うのだが、あまりくどくいわれると、内容がよくても読み終わった後に爽快感を得られない。いったい井沢氏は、学会批判をすることによって、自分の主張の正当性を主張しているのではないか、とつい思ってしまうくらいで、その点は主張自体の評価から考えるともったいない気がする。