権威主義、史料至上主義、呪術観の無視という従来の日本学界の常識を再検討し、日本史に新たな視点を提供する「逆説の日本史」シリーズの第6弾。本書でも著者のオリジナリティあふれる学説をもとに、明快に日本史を紐解いている。<P> 第1章から第3章の「鎌倉新仏教の展開」は仏教史書としても極めて秀逸。仏教がインドで生まれ中国・朝鮮を経て日本に渡ってきた経緯から、鎌倉時代における仏教への認識、民衆の仏教への関与度などを綿密に考察してあり、時代背景を重視する著者ならではの鋭い分析が展開されている。本書により、仏教はかなり多彩な解釈があり、各宗派が乱立し現在に至る経緯をようやく理解することができた。
大好きなシリーズなんだけど、この巻は、日本宗教史が大きなウエイトを占めていて、申し訳ないが、それがよく分かりにくく長いのが、難点。宗教って難しいのね。そこを除けば、元寇での、使者の首を刎ねてしまった話(初めてしりました)、天皇家の言霊主義、等なかなか興味深い。また、次巻の中心となる後醍醐天皇のエピソードなどは面白かった。北朝南朝の歴史が細かく理解できたのも、この本のおかげです。ただ全体的には、ちょっとパワーダウンに感じましたが、次巻は面白かったので、よしとしたいです。
正直、古代黎明編、古代怨霊編で見せた、梅原猛をベースとした、痛快無比な論理展開はなく、残念ながら明らかにパワーダウンしたことは否めません。<P>鎌倉仏教発展の経緯に関する前半は、それぞれ最澄から派生し、紆余曲折を繰り返しながら発展を遂げた禅宗派、浄土宗派、そして日蓮宗派の概要を記述するに留まっています。得意の怨霊信仰との関連性を見出すなり、このシリーズならではの論理展開を見せて欲しかったと思います。<P>後醍醐天皇の親政の挫折に焦点をあてた後半部分に関しても、歴史上の他のリーダーとの比較の中で親政失敗の必然性を説く部分はさすがにこのシリーズならではの面白味にあふれる部分ですが、あまりに説明がくどく、更にそこからの論理の発展がないことが残念でなりません。<P>!!料が多く存在する鎌倉以降に関しては、新たな視点で歴史を読み直すことは確かに難しいことなのかも知れませんが、逆にこの「逆説」シリーズの存在意義そのものも奈良、平安時代迄が限界なのかとの気持ちも抱いてしまうところです。