新選組一番組長・沖田総司を主役にした、京都時代の新選組のお話です。とかく色んな表現がされる彼ですが、このお話の中の沖田さんは、生来の天真爛漫さ・純真さが際立っているからこそ、余計に病魔に冒され衰えていくしかない姿に、更に悲劇性を感じさせます。一見明るく見える姿の影には、当代きっての剣豪であるがゆえに諦め、傷つき、悩む”人間”沖田総司が見え隠れしています。自分が病に冒されていながら、病院で知り合った同じ病気の子供との話など、作り話と知りつつも、沖田さんの優しさと情の深さに胸を打たれ、ついつい涙がこぼれてしまいます。沖田さんが好きな方は、この1冊を読めばさらに好きになること間違いなしです。普段は厳しい土方さんが、こと沖田さんの事に関しては慌てふためく姿も、コミカルでおもしろいです。
死者にむち打つつもりはないけれど何とも色気のない文章。定型通りの新選組賛美の作品であるのに、読者が新選組シンパであるないに関わらず読者を引きつける力がないかんじ。同じ素材で同じテーマを持って書いているのに他作家の作品と比べて文章に魅力がなさすぎる。実際、作者は新選組に著者として惚れていなかったんじゃないかと思わせる所がある。確信犯かもしれないが。ただしこの作者自身のいいわけと称したあとがきの中でかなり史料に忠実に、想像や創作による手心を加えずに作品をものしたことなど書いてあるのはよい。史料の史料として価値がある。個人的には読了するのにうんざりするほど文章に魅力がなかった・・・・描かれている沖田像に問題はなかったが。池田屋事件の前に禁門の変が起こっているところが引っかかって評価はそこで決まった。
鬼と言われた男がいた。新撰組副長助勤一番隊隊長沖田総司その人だ。 しかし、沖田自身の普段の顔はかなり違うものであるようだ。この沖田総司恋唄にはそんな沖田の顔が書かれている。<P>時代物特有の歴史的事実に縛られすぎて読むことが困難になってしまうこともなく、軽いタッチで小説の醍醐味を十分に発揮しながらもなお作られすぎず、時代物の楽しみも味わえる作品だ。歴史小説初心者でも最後まで一気に読めてしまえる一冊だと思う。