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| 春の雪
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三島 由紀夫
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三島由紀夫の遺作である長編「豊穣の海」の第一部だが、これ自体ひとつの恋愛小説として楽しめる。難解かも?という先入観は見事に打ち砕かれ、美しい文章で綴られる禁じられた恋の行方に一気に引き込まれてしまった。読むべき小説のひとつ。 最近の小説は心理描写が巧みなものが多いが、さすがは三島由紀夫で心理描写のみならず風景描写も素晴らしかった。写真の中での描写も大変に巧みであり、文字通り頭の中に風景が浮かびあがるようであった。 心理描写、話の構成そして仏教哲学、全て一級品である。というよりも面白い。特に松枝と聡子の悲劇的な話、風景描写は凄いと思う。最近の小説や海外小説にはこの風景描写は書けない。昔の巨匠ならではの風景描写だ。海外小説の良い所と日本文学でしか味わえない風景描写が見事に混ざり合い一大ロマンスを描いている。
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