常朝は、江戸時代になって100年平和が続き、武士の道徳は廃れ、男はまるで女のようになってしまったと嘆いている。今と同じ。男はすぐに猛々しさを失い女々しくなるものなのかもしれない。時代が荒廃していくときはチャンスだと言っている。ちょっと努力するだけで、すぐ周囲から抜きん出ることが出来るからだ。この本に書かれているのは行動する者の教えだ。必死でやれ、身を捨ててやれという。しかし盲目的に「やるんだ」と言うだけでなく、実践的で尤もな教訓が述べられている点にこの本の価値がある。「生きるか死ぬかの場面では、死ぬ方を選べ」といっているが、これは一種の比喩。葉隠の著者・山本常朝は禅の修行もしている。なぜか、ほとんどの内容が今の時代にぴったりな気がする。三島の読み解きも、分かりやすい。 三島由紀夫が男色に走ったのも、体を鍛えるようになったのも葉隠の影響があったのかもしれない。三島を理解する上でも重要な本だ。
三島のこの本と対極にあるのが「不道徳教育講座」だろう。<BR>この2冊を読むと人生が「深刻」な状態から「真剣に軽くなる」
常朝の「葉隠」は陰鬱な書では決してない。それとは反対に、非常に明るい本と言える。あくびを止める方法だとか、人にアドバイスするタイミングや方法など人生を楽しく生きる方法を書いているとすら感じられるくだりも多い。<P>三島が葉隠れをどのように受け取ったかは、私には想像できないが、三島の解説は面白い。読み易いし、訳も屈託がなく気持ちが良い。<P>インテリや男女についてなど、非常に痛快なところも多く、繰り返し読める。