ドラマ化もされていて、カスタマーレビューも高いので面白いのだろうと思って読んだのですが、医療現場・職場の人間関係・友情・家族・恋愛・人間の生き方、すべてが数十年前に書かれたとは思えない、社会小説の金字塔と呼ばれてふさわしい作品でした。<P>全5巻どれもけっこう厚いのですが、ストーリーに引き込まれ長さは感じないで読み進めます。けっこう字も大きいです。<BR>この作品は3巻まで書かれてからしばらくブランクをおいて4巻と5巻は続編として書かれたらしいので、昔「白い巨塔」を読んだ人はまだ4、5巻の内容は知らないかもしれません。私の母も昔読んだけど3巻までの内容しか知りませんでした。<P>5巻のラストはこの長編をしめくくるのにふさわしいラストで、読み終わり本当によい本だったなと思いました。このエンディングが好きな人多いと思います。
医学部教授の座を狙う財前助教授の逞しさ、暗い思い、確かな外科医の技術、実力は小説の中で脈々と伝わってくる。魅力ある人物だ。そして、財前助教授の教授就任を阻む勢力、東教授の思惑、画策は暗く淀んでいて人間らしく憎らしいとさえ感じる。<P> 新潮文庫第1巻を読み終え、感動というより、出てくる人物たちの権力に魅せられたともすればあまりにも醜い、すさまじい権力抗争の具体性に惹き込まれてしまった。<P> 大学医学部の医師であり大学病院の医師でもあるという面で、会話も慇懃な丁寧さの中には心理的な攻防も見え隠れし、面白い。権力の虜となっているかと思うと、聖人のごとき医師として人道的な見地も十分備えている人物たちが互いに意見を言い、他者を支持し、自分が有利な立場になるよ!動き、時に連帯していく様は人間らしく緻密な文章表現で実に面白い。<P> ドラマも見てドラマの良さもあり面白いと感じたが、小説は小説で又、緻密に面白いです。
やっと現代版「白い巨塔」のテレビ化で25年ぶりに再会したのですが<BR>山崎豊子という作家の力量の凄さを思い知らされたような気がします。<BR>田宮次郎が演じた白いシリーズの乱発で原作は大したことないんじゃないかと、その時代は読む機会を逃していました。<BR>自分としてはこれは実に悔しい。<P>25年前山崎豊子氏はこの小説を執筆するにあたり膨大な時間を費やしたそうです。<BR>現代の医学会と当時の医学会、とくに大学病院という閉鎖された社会は当時と変化がないそうです。<BR>医学の進歩とはよく人の口にあがる言葉ですが、教授会の選任などは<BR>私利私欲が今だに渦巻いている世界だとか。<P>手術シーンや患者、医者の心理描写はその集大成です。<P>この小説を読んで違和感を感じるのは貨幣価値くらい。<BR>給料の桁が一桁違うのを現代風に置き換えてみれば、新作の小説となんら変わりがありません。<BR>財前という姓の野望を持った、たたき上げた医者の波乱に満ちた1人の医者の運命の序曲がページをめくった瞬間に押し寄せ、<BR>第一巻から読者を離さないといった書物です。